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03 研究書
ホームズ研究、辞典、ドイル伝、ロンドン
2001-10 【55】
【ホームズ研究】
『ホームズとワトスン ──友情の研究』
ジューン・トムスン
押田由起 訳
(創元推理文庫)
シャーロキアンであり、優秀なミステリ作家でもあるジューン・トムスンによる、ホームズとワトスンの生涯を追った《ノンフィクション》です。トムスンは『ホームズのクロニクル』『ホームズのジャーナル』『ホームズの秘密ファイル』(いずれも創元推理文庫)という、完璧なパスティーシュシリーズの作者でもあります。ミステリ作家がパスティーシュを書き、その後に研究書を書いたというケースは稀有、というより他にはないかもしれません。
ホームズ個人の研究に留まるのではなく、ホームズとワトスンという2人の人物の相互関係を重視した研究という点で、他の追随を許さない名著となっています。ホームズ・ワトスンというコンビは、後のミステリに大きな影響を及ぼした、探偵小説の代名詞的な構造であるからです。
必読です。
『シャーロック・ホームズを読む』
エラリー・クイーン他
(講談社)
エラリー・クイーン、ドロシー・L・セイヤーズ、ジュリアン・シモンズ、エド・マクベインらによる、シャーロック・ホームズ小論をまとめた、本格的なホームズ論集です。
クイーンの片割れことフレデリック・ダネイは、有名な自らとシャーロック・ホームズとの出会いを書いています。セイヤーズの小論は、ドイルとポー、ホームズとデュパンを比較するものです。
編訳者の小林司・東山あかねによると、世界初のホームズ論集だそうです。
『シャーロック・ホームズの世界』
マーティン・ファイドー
(求龍堂)
ホームズの世界を通して、19世紀を探求してしまおうという研究書です。求龍堂の本という時点で期待してしまいますが、やはり他のホームズ本と同様、この本もA4版とサイズが大きく、カラー多くの写真や図版が収録されている素晴らしい出来栄えの本です。
作者のファイドーはシャーロキアンではなく、切り裂きジャックやディケンズの研究者のようです。優れたホームズ研究書でありながらも、名探偵と同時代に生きた一筋縄ではいかない人たちを多く紹介している本書は、これまでの研究本に飽きてしまったという人にもおすすめの1冊です。
『シャーロック・ホームズの推理学』
内井惣七
(講談社現代新書)
ホームズの推理について、その専門家によって書かれた研究書です。哲学、論理学、倫理学の研究である作者が、ホームズの想像力を駆使した《成功の確率を高める方法に支えられている》推理について、その論理過程を解明しています。基本的に「うさんくさい」と思われているホームズの能力ですが、ホームズの確率論的な方法について教えられるうちに、僕は「やっぱりホームズっていい探偵なんじゃないか」と思ってしまいました。
『シャーロック・ホームズの記号論』
T・A・シービオク
J・ユミカー=シーオビク
富山太佳夫 訳
(岩波現代選書)
副題は、──C・S・パースとホームズの比較研究──
シャーロック・ホームズの犯人探索術は、アメリカのもっとも優秀な知性として、プラグマティズムの哲学者として有名なパースの思考方法と同一のものであった──という魅力的な視点から、双方の比較がなされている著作です。作者のシーオビクは、言語学者・記号学者として世界的な名声を勝ちえているという人物で、共著者の夫人は人類学者です。
付録として「ネモ船長の船窓」──ネモ船長は『海底二万里』に登場する──という、ヴェルヌとその作品を楽しんだドイルの関係についての記述が収録されています。
『図象探偵』
荒俣宏
(光文社文庫)
知識欲魔神荒俣宏による、《目で解く推理博覧会》と副題をつけられた、挿し絵などの図象から、描かれたものの招待を推理しようという興味深い本です。ホームズ関係の推理として、「立ち這いするヘビたちの謎」(まだらの紐)と、「黒か斑か──魔犬たちの正体」(バスカヴィル家の犬)が収録されています。ドイルの「失われた世界」に関する「遥かなるギアナ台地へ」や、ポーご贔屓のコーヒーハウスについて書かれた「群衆のロンドン」など、その他にも興味深い考察が目白押しです。
『シャーロック・ホームズが誤診する』
パスクァーレ・アッカード
高山宏 訳
(東京図書)
おそらくは、もっとも考証を重ねた専門的な内容を、学問の専門書のような文体で書かれている、シャーロック・ホームズの研究書です。装丁といい、文体といい、皮肉といい、かなり固い印象を受けざるを得ない本なのですが、明らかとしたいことは単純です。
ホームズがどうしてこんなに人気があるのか?
『シャーロック・ホームズ健在なり』
長沼弘毅
(番町書房)
日本でもっとも高名なホームズ研究家による、ホームズ研究書の一冊です。全部で9冊あるのですが、どれもが絶版になっていて、古書としてもそれなりの値段がついています。内容で特筆すべきは、ドイルの医師としての生活が綿密に再現された個所でしょうか。膨大な資料によって構成されていることが目に見えるような、素晴らしい出来栄えです。
『シャーロック・ホームズの世紀末』
富山太佳夫
(青土社)
ホームズやチャレンジャー教授、そしてコナン・ドイルが暮らした世紀末の大英帝国。その光と影を、様々なキーワード──猟奇殺人、植民地戦争、女権拡張論、労働争議、美女、ボクシング、優生学、神秘思想、進化論──を元にリアルに綴った文化論です。2つ前の世紀末は、現在の大量消費社会へと繋がる変化が起きていた時代だけに、ホームズを通して過去を知り、そして現在を知ることにもなる、本なのかもしれません。
『シャーロック・ホームズ讃歌』
小林司・東山あかね編
(立風書房)
1980年に出版された、日本人の手による初のシャーロック・ホームズアンソロジーです。編者の二人をはじめとして、目次にはどこかで目にしている名前がずらりと並んでいます。中でも、実吉達郎がしっかりと得意の動物ネタ《獅子のタテガミを求めて》を書いていることに注目です。
ホームズとワトスンの関係や、ホームズの女性嫌いなどの《第一章 ホームズの人間像》、鉄道と地下鉄、銀行や新聞などに注目した《第二章 大英帝国裏面史》、ホームズの広告への登場やホームズ物語の位置づけなどに言及した《第三章 マスコミに踊るホームズ》、朝食の研究やモリアーティの論文『小惑星の力学』、警官たちについて書かれた《第四章 十九世紀の知恵》、ホームズの秘密やショスコム荘の謎を明らかとする《第五章 秘密をあばく》、と素晴らしく充実した内容となっています。
『ガス燈に浮かぶシャーロック・ホームズ』
小林司・東山あかね
(立風書房)
1980年に出版された、日本のホームズ研究の第一人者による研究書です。雑誌に連載されていたものが大幅に加筆されています。筆者の専門である心理学的なアプローチで書かれた章や、ホームズ物語が出版界に果した役割について、探偵としての理想像について、舞台となったロンドンについて、ヴィクトリア時代の禁じられた性について、などと多岐に渡った内容には関心させられずにはいられません。今からの20年も前に、本書のような多くのテーマを扱った研究が発表されていたというのは驚きです。
『ホームズの世界 No.19』
日本シャーロック・ホームズ・クラブ
中国支部《スコウラーズの残党》のメンバーによって編集された、日本シャーロック・ホームズ・クラブの会報です。平賀三郎、北原尚彦といった著名なシャーロキアンが寄稿しているところも流石は、ホームズ・クラブですね。ホームズ学の自由で楽しい研究発表の場として、会報が活用されていることがよくわかる内容となっています。
『モラン大佐とシルヴィアス伯爵』
飯塚聡
小論をまとめた冊子で、筆者の飯塚さんから頂きました。副題は、──コナン・ドイル作「マザリンの宝石」の成立んついて──で、ホームズ譚『マザリンの宝石』とドイル自身による戯曲『クラウンダイヤモンド』を比較検討しておられます。『マザリンの宝石』は、『クラウンダイヤモンド』の小説化であり、『クラウンダイヤモンド』は『空き家の冒険』の戯曲化であり、従って『空き家の冒険』と『マザリンの宝石』は、同一の物語の変形である。という推定を検証されているのですが、ああ本物の文学の研究者なんだなぁ、と関心してしまいました。
『シャーロック・ホームズへの旅』
小林司 東山あかね
(東京書籍)
高名なシャーロキアン夫妻による、ホームズを訪ねる旅のプラン。前半は、ロンドンや郊外を旅するプランが、後半では、ホームズ生誕100周年を記念して行われたライヘンバッハ巡礼の旅──《最後の事件ツアー》──が報告されています。
『シャーロック・ホームズへの旅2』
小林司 東山あかね
(東京書籍)
前作に引き続いて、ホームズやドイル絡みの旅を提案している旅日記。ロンドン市内や、『美しき自転車の乗り』の舞台となった土地を訪ね、著者にとっては3回目というスイスツアーも。いったい何回くらい行ってるんだろうか……、この夫妻は……。いいなぁ。
『世界五大探偵の戸籍簿』
ヒュー・イームズ
(講談社文庫)
ドイルはホームズを殺し、シムノンはメグレを昇進させ、ハメットはスペードに微笑ませ、アンブラーはスパイ小説というジャンルを確立させ、チャンドラーはフィリップ・マーロウを生みだした。名探偵が生まれるためには、「偶然に」といった説明だけでは十分でなく、その時代の社会が大きく影響していたのだ、という仮説による、作家と作品、作家とキャラクターとの関係についての考察がなされた著作です。
『シャーロキアンへの道』
水野雅士
(青弓社)
冒頭の第1章に、本書を書き上げるために使用された文献のリストを配した、筆者入魂のホームズ研究書です。第2章は、実在の人物や架空の人物、時代を感じさせる出来事や道具などの様々なキーワードが並んでいます。その解説は、もちろんホームズ絡みのもの。さらに、その解説を書くために使用された、数多くの文献リストまでが付随していて、本文よりも参考文献のリストの方が長いくらい……。長年のホームズ研究の成果をまとめた、素晴らしい本です。
『ホームズ探偵学序説』
水野雅士
(青弓社)
ホームズ物語にチラリと登場するだけなのに、その存在に注目するホームズファンは数多いという、幻の書物があります。それは、ホームズ自らの手になる、様々な探偵の技術を網羅した著作「探偵学」です。この本は、その序文を発見したという訳者が、翻訳したものを披露する──という趣向の本です。
第2部として、『バスカヴィル家の犬』を魔犬の視点から描いたというパロディが収録されています。ちなみに、このアクロバティックな設定のパロディ小説の主人公、魔犬の一人称は《吾輩》です。
『シャーロック・ホームズの時間旅行』
水野雅士
(青弓社)
第1部は、ホームズ物語に登場する歴史的な人物や出来事を切り口に、人類の誕生から20世紀の初頭までを語ろうという《時空を超えた世界旅行》。ドイルの教養に親しみつつ、ヴィクトリア朝をはじめとする当時の発明品にも言及するという、興味深い内容です。
第2部は、ホームズは生きているのか? という問いに答えるパロディ『シャーロック・ホームズのタイムマシン』。もちろん、ウェルズの『タイムマシン』に関する記述もあります。
『シャーロキアンは眠れない』
小林司・東山あかね
(飛鳥新社)
小林・東山夫妻による、副題に《ホームズ物語に隠された63の謎》と銘打たれた、謎学ものです。Q&A形式で書かれていて、簡潔な答えが述べられたあとに、豊富な知識による蘊蓄が続きます。深いグリーンを基調とした装丁のデザインが秀逸で、このカバー自体にも一つの謎が秘められているという、遊びに満ちた本です。
『シャーロック・ホームズの醜聞』
小林司 東山あかね
(晶文社)
シャーロック・ホームズにとって唯一の生みの親であると同時に、彼を殺したただ一人の人物でもあるコナン・ドイル。何故、彼が自分の生み出した世界一の名探偵を滝壷に落とすという、事実を立ち篭める水蒸気の中に葬り去るという、あやふやな行為によって、自分の人生から消し去らねばならなかったのか。
この謎のヒントは、すべてドイル自身が残した60作のホームズ物語に隠されているとして、日本を代表するシャーロキアンの両氏が、ドイルという人物の実像に迫る評論です。
『シャーロック・ホームズ家の料理読本』
ファニー・クラドック
(晶文社)
著者がハドスン夫人を訪ね、彼女から直接に伝授されたというヴィクトリア時代の伝統的な料理、全237種類を紹介する料理読本です。ホームズやワトスンが舌鼓を打っていた料理の数々が登場します。ホームズの好きなハムの調理法や、ワトスンのお好み料理が載っているかと思えば、なんとマイクロフトが好んだというケーキまで!?
『ミステリ・ハンドブック シャーロック・ホームズ』
ディック・ライリー パム・マカリスター 編
日暮雅通 監訳
全60作のホームズ物語レヴュー、コナン・ドイル小伝、ロンドン・ミステリマップ、写真で見るホームズ・スポット、など素晴らしく豊富な内容の研究書です。レヴューでは、事件の発生年次、あらすじ、名言、奇妙な点・矛盾する点、などがまとめられています。装丁もいいし、本文のデザインも読みやすく、巻末のリストも素晴らしい出来栄です。
作者の両人は、この著作に先駆けて、アガサ・クリスティ読本も著しているんだとか。凄い。
『シャーロック・ホームズ悠々学々』
植田弘隆
(透土社)
EQに長きにわたって連載されていた、シャーロッキアーナ(ホームズ学)の集大成的な本です。「ホームズと名刺」「ホームズと新聞」といったところから、「ホームズと虫」「ホームズとハワイ」「ホームズとW・C」というものまで、多岐にわたる話題が集まっています。
『シャーロック・ホームズ 事件と心理の謎』
ジョン・ラドフォード 著
小林司 東山あかね 熊谷彰 訳
(講談社)
科学的心理学の手法によって、ホームズとワトスンの性格を分析する──しかも、2人はゲイだったのか? という問題まで──という確信犯的な研究書です。ホームズの知能に関する話題や、ワトスンの心理、パロディの登場人物としてもお馴染のフロイド絡みの話題まで。このホームズ研究書は、心理学の専門家が著して、同じく心理学の専門家が訳した、興味深い共同作業の結果です。
『わたくしだから』
大槻ケンヂ
(集英社)
ロッカーで、UFOとか格闘技が好きな人、大槻ケンヂによるエッセイ。意外なことに彼は、ホームズの使っている武術《バリツ》に興味を持ってしまい、写真や図解までついたバリツ研究を著した、第一人者でもあるのです。
『シャーロック・ホームズ秘宝館』
北原尚彦
(青弓社)
ホームズ研究家であり作家でもある作者の、膨大なホームズものコレクションを紹介する本です。シャーロック・ホームズは、本当に様々なジャンルに顔をのぞかせている有名人で、彼によく似た人物も度々登場しています。NHK教育の『お母さんと一緒』にもでているし、ファミコンソフトやマイコンソフトにも、新スタートレックにまで出ているんですね。
『名探偵の世紀』
森俊英 山口雅也
(原書房)
副題に、《エラリー・クイーン、そしてライヴァルたち》とあるように、ホームズに関する記述は僅かに、笠井潔による「奇妙なワトスン役」というワトスン役という用語とヴァン・ダインに関する小論がある程度です。特集されている探偵は、エラリー・クイーン、ドルリー・レーン、フィル博士とH・M卿、アンリ・バンコラン、ファイロ・ヴァンス、ネロ・ウルフ、マローンとヘレンとジェイクのジャスタス夫妻、といった錚々たるメンバーです。
『バカミスの世界』
小山正とバカミステリーズ 編
(BSP)
《シャーロック・ホームズの狂気》と銘打たれた、パロディー・パスティーシュ紹介が掲載されています。バカミスといっても、馬鹿なミステリーだというわけではありません、酷くサービス精神に富んだ素晴らしい作品のことをバカミスと表現することもあるからです。ホームズのパロディって、ホームズ火星人と戦う『シャーロック・ホームズの宇宙戦争』のようなバカミスが本当に多数ある……、バカミスの素晴らしき温床ですよねぇ。
『シャーロキアンの優雅な週末』
田中喜芳
(中央公論社)
カラーのイラストや写真を挟んだ、豪華な造り──値段もそれなりの2800円+税──の研究書です。作者は、アメリカのベーカー・ストリート・イレギュラーズという──権威がありすぎて批判の対象となることもあるらしい──団体に、日本人として二番目に入会を許されたという人物です。
『シャーロック・ホームズ 秘密の一端』
シャーロック・ホームズ研究会 編
(青春出版社)
典型的な謎学もの──「磯野家の秘密」みたいな──です。そもそも謎学は、ホームズ研究によってはじまったとも言われていて、本書のような本は、それこそ無数にありそうなものですが、ここまで典型的なものは逆に珍しい……。体裁は完全な謎本ですが、内容は侮れません。無数の研究本を参考文献にあげているだけあって、様々な説や考証を網羅的にまとめてあります。
『倫敦洒脱探偵』
川村幹夫
(日本経済新聞社)
副題は、商社マンの英国ウォッチング。仕事の合間に、ホームズの名言を覚えたり、シャーロキアンにとっての名所をめぐっていたという著者による、イギリスの習慣やドイルの人生について紹介するエッセイです。
『イギリスびいき』
林望 川村幹夫 他
(講談社α文庫)
林望や川村幹夫らによる、イギリスびいきなエッセイが集められたアンソロジー。ホームズ関係では、仕事でイギリスに滞在していたという経験を持つ、著名なシャーロキアン川村幹夫の「シャーロキアンの守備範囲」が収録されています。
《河出文庫 シャーロック・ホームズ・コレクション》
『シャーロック・ホームズ ガス燈に浮かぶその生涯』
W・S・ベアリング=グールド 著
小林司・東山あかね 訳
ホームズ研究者の先駆けとして、ホームズ年譜の作成者として、注釈つきシャーロック・ホームズ全集(ちくま文庫刊)の注釈者として、非常に高名なW・S・ベアリング=グールドによって書かれた、シャーロック・ホームズの伝記です。もちろん、ホームズ譚とその時代の資料を元にしてまとめられた、架空の伝記で、古典的な名著とされています。
講談社から上梓されていた物の文庫化です。
『シャーロック・ホームズ17の愉しみ』
J・E・ホルロイド 編
小林司・東山あかね 訳
児童文学の「くまのプーさん」や本格ミステリ「赤い館の秘密」ので知られるA・A・ミルン、「ピーター卿シリーズ」で知られる英国ミステリの女王ドロシー・L・セイヤーズ、密室ものの巨匠として名高いミステリ作家のディクスン・カー、などそうそうたる面々による、パスティーシュ・評論・伝記・研究・挿し絵評、などを収録したアンソロジーです。
海外のシャーロキアンたちのホームズ研究の成果に触れることができる貴重な名著であり、セイヤーズやカーなど、ミステリ作家としても特別な人たちによる研究を目にすることができる点からも、重要な一冊です。
『シャーロック・ホームズの生まれた家』
ロナルド・ピアソール 著
小林司・島弘之 訳
著者のピアソールは、ヴィクトリア朝研究の専門家で、本書は、コナン・ドイルの生涯を描いた、シャーロック・ホームズの創成に関する研究書です。ドイルの暮らした時代の描写は綿密ですし、彼の高名な先祖や家族のことも詳細、二度の結婚生活についても触れられていて、ドイルの個人像が浮かび上がるようです。専門家の十分な調査の上に書かれていることがわかります。
『シャーロック・ホームズの私生活』
ヴィンセント・スタリット 著
小林司・東山あかね 訳
もっとも古いホームズ団体である、ベイカー・ストリート・イレギュラーズの創立者として知られる、ヴィンセント・スタリットによるホームズ譚批評です。ハドスンさんに関する研究が見物だと思います。
文芸春秋からハードカバーで出ていたものが文庫落ちしたのですが、その際に、二章が著作権の関係で割愛されているとのこと。ハードカバーが欲しいところです。
『シャーロック・ホームズの見たロンドン』
チャールズ・ヴァイニー 著・編
田中喜芳 訳・解説
ホームズ物語の舞台であるロンドンを、写真で再現するという趣向の本です。スコット・ランドヤードやベーカー街、ウォータールー駅やオックスフォードサーカスなど、ホームズファンにとっては活字ではお馴染の名所を、当時の写真で見ることができます。
『シャーロック・ホームズの推理博物館』
小林司・東山あかね
時代を隔て、今なお世界的な人気を誇るシャーロック・ホームズというキャラクターについて、その秘密を探ろうというホームズガイドブックです。1978年に立風書房から『ガス燈に浮かぶシャーロック・ホームズ』として上梓されたものに、一部、加筆と訂正を施した、文庫落ちです。日本のホームズ譚の出版状況に関する記述が、ちょっと古すぎます。
《丸善ライブラリー》
『シャーロック・ホームズ学への招待』
平賀三郎
60のホームズ物語に隠された謎について、読者として追及しようというホームズ物語の楽しみ方を提案する、ホームズ学への入門書です。第1章──ホームズ学入門、第2章──《最後の事件》探検隊、第3章──《バスカヴィル家の犬》大研究、以上の3章によって構成されています。
『シャーロック・ホームズ観賞学入門』
木村申二
「ノーウッドの建築師」「バルカヴィル家の犬」「株式仲買店員」以上の3作を、徹底的に楽しんでしまおうという著作です。登場人物の紹介、物語の発端となる事実、謎の整理や解明までの道筋、などが詳細に書かれています。単一の作品をここまで研究しているものは少なく、貴重です。
【辞典】
『シャーロック・ホームズ百科事典』
マシュー・バンソン
日暮雅通 監訳
(原書房)
百科事典の本文の他に、ホームズ年表、語られざる事件のリスト、ホームズの著作、など多くのリストを併録しています。特徴としては、映像化作品についての言及が豊富なことでしょうか。こちらは横書きです。
『シャーロック・ホームズ辞典』
ジャック・トレイシー 著
各務三郎 監訳
(すずさわ書店)
監訳の各務氏は、「究極ホームズ辞典」と述べていますが、まさに辞典です。どうでもいいことだと思える文言までが項目入り。イラスト、写真などが豊富で、特にベーカー街の下宿を再現した図面がなかなか面白い。こちらは縦書きです。
パシフィカから出版されていたものに、新たに図版などを加えた改訂版です。
『シャーロック・ホームズ辞典』
北原尚彦
(ちくま文庫)
グールドによる《詳注版 ホームズ全集》の別巻として上梓された、文庫の辞典です。《詳注版 ホームズ全集》の注釈を何巻の何ページといった具合に五十音順で網羅しています。上記の辞典2冊比べ、格段に軽くて使いやすいです(笑)。
【ドイル伝】
『コナン・ドイル』
ジュリアン・シモンズ
(創元推理文庫)
評の確かなミステリ作家として知られ、自らホームズ物の小説も書いているシャーロキアン、ジュリアン・シモンズによるコナン・ドイルの伝記。いつもの創元推理文庫で使われている紙とは違う、真っ白なつるつるな紙に、カラーの写真や図版などが使用されている、奇麗な本です。有名な作家としてだけではなく、多彩な活動によってイギリスを代表する公人でもあったというドイルの姿が、確かに浮かび上がってくる名著です。
【ロンドン】
『ホームズのヴィクトリア朝ロンドン案内』
小林司 東山あかね
(新潮社 とんぼの本)
例の夫妻が、ホームズのロンドンを訪ね歩き、名探偵ゆかりの土地を巡っています。
多くの写真が掲載されているのですが、特筆すべきは、現代の姿と過去の姿が同時の収められていることでしょうか。ホームズが活躍した時代そのままの姿を残している建物もあれば、チャリングクロス駅のように屋根の形状が異なっているものもあって、もちろん、すっかり風景が変わってしまった場所もあります。
いい本です。
『ワールド・ミステリーツアー13 @【ロンドン篇】』
(同朋社)
13人の筆者による、スコット・ランドヤードや《怪奇パブ》、マダム・タッソー鑞人形館などを巡るロンドン・ミステリーツアー。推理小説のミステリーと、怪奇現象のミステリーが一緒なっていて、ミステリの舞台となっている場所を巡っているものもあれば、幽霊の出る《怪奇パブ》を訪ねているものもあります。
『ミステリー風味ロンドン案内』
西尾忠久
(東京書籍)
推理小説の舞台となった場所を巡るロンドン案内です。シャーロック・ホームズに直接に関係している場所は、続編『ミステリー風味ロンドン案内2』に収録されているので、本書には登場していませんが、ホームズ譚にも登場する有名な店などについて書かれているので、シャーロキアンは興味深く読むことが出来るでしょう。建物や品物を描いたカラーの挿し絵も奇麗です。巻末に掲載されている、店の位置が書かれた地図を見るだけでも楽しいかもしれません。
内容とはまったく関係ありませんが、なんとなく教科書のような製本だと思っていたら、東京書籍だからなんですね。納得してしまいました。
『ミステリー風味 ロンドン案内2』
西尾忠久 内山正
(東京書籍)
ロンドンの街角とアーチャー、クリスティ、ドイルなどのミステリ作品を紹介しています。ペル・メルやストレンド街に続いて、もちろんベーカー街界隈も! 色つきの水彩画が奇麗で、各所の歴史やミステリ作品との関わりについて述べられている、なかなかの本です。1も欲しい……。
『ヴィクトリア朝百科事典』
谷田博幸
(河出書房新社)
英国ヴィクトリア朝という大量消費社会の先駆けとなった時代について、80点の道具を説明することによって、その時代の《あたり前》を理解しようという本です。ホームズ物語に登場する、様々な小物たちも多数登場しています。
『ロンドン・パブ物語』
石原孝哉 市川仁
(丸善ライブラリー)
ホームズの時代や、それよりもずっと古くから存在している、《イギリスで一番ほっとする場所》であるパブを紹介する本です。そこで振る舞われる飲み物の歴史や、有名なパブの紹介、現代の事情などについて書かれています。ホームズもパブで情報収集をしてましたよね。
『こどもたちの大英帝国』
井野瀬久美恵
(中公新書)
副題は、《世紀末、フーリガン登場》。19世紀の末に衰退期を向かえていたイギリスに、突如として現れた、子どもの不良集団《フーリガン》。現在では、ヨーロッパなどでサッカーの試合が行われると、試合の前後に暴徒化する集団を指すことが多いのですが、元々、この言葉が意味していたのは、首にネッカチーフをまきラッパズボンにぴかぴかのブーツを履いているという出立ちで、集団暴力をふるう少年グループのことだったそうです。
ホームズが結成したベーカー・ストリート・イレギュラーズと、直接には関係ありませんが、ホームズ譚には書かれていない、リアルなイギリス像の一端を垣間見ることができます。
『ダンディズム』
生田耕作
(中公文庫)
19世紀初頭の社交界に君臨したという伊達男ブランメルを通して、イギリスのダンディという反時代的な生き方を著した本です。ホームズの時代よりも古く、またホームズ譚には伊達男という存在が登場するものの、ドイルが興味を持っていなかったのか、すでに存在しない種類の人間だったのか、スタイリッシュな生き様を感じさせるほどの描写がありません。ホームズ譚には書かれていない、多くの出来事の一つとして、興味深い傾向だと思います。
『「パンチ」素描集 19世紀のロンドン』
松村昌家 編
(岩波文庫)
『パンチ』は、1841年に創刊され、1992年まで刊行された、風刺週刊誌です。この本には、1871年までのパンチに掲載された、ロンドン万博やテムズ川の汚染などの風刺画が収録されています。コナン・ドイルの叔父であり、その道の大家であったジョン・ドイルの息子である、リチャード・ドイルの作品も含まれています。
『100年前のロンドン』
100年前シリーズ
(マール社)
ホームズ物語に登場するロンドン市内の風景が、写真や鳥瞰図によって紹介されています。特に鳥瞰図は、各通りの相関関係がわかり、建物も描かれていることから、とても面白い図面となっています。ホームズがここをあっちの方向へ通っていたんだなぁ、と思ってみたり……。
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