(いわゆる「修徳高校パーマ退学訴訟」最高裁判決)
事件番号 平成5年(オ)340号
事件名 高等学校卒業認定等請求事件
裁判年月日 平成8年7月18日
法廷名 最高裁判所第一小法廷
裁判種別 判決
結果 棄却
原審裁判所名 東京高等裁判所
原審事件番号 平成3年(ネ)2225号
原審裁判年月日 平成4年10月30日
一審裁判所名 東京地方裁判所
一審事件番号 昭和63年(ワ)8202号ほか
一審裁判年月日 平成3年06月21日
判示事項
普通自動車運転免許の取得を制限しパーマをかけることを禁止する校則に違反するなどした私立高等学校の生徒に対する自主退学の勧告に違法があるとはいえないとされた事例
参照条文 民法709条、学校教育法11条、学校教育法施行規則13条
(※判例時報1599号53ページ以下)
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人斎藤義房、同八塩弘二、同石川邦子、同古口章、同岡慎一、同坪井節子、同伊藤重勝、同末吉宜子、同黒岩哲彦、同須納瀬学、同楠本敏行、同石橋護、同古波倉正偉、同児玉勇二、同平湯真人、同吉澤雅子、同柴垣明彦、同森野嘉郎、同伊藤芳朗、同村山裕の上告理由第1ないし第3及び第10について
所論は、修徳高校女子部の、普通自動車運転免許の取得を制限し、パーマをかけることを禁止する旨の校則が憲法13条、21条、22条、26条に違反すると主張するが、憲法上のいわゆる自由権的基本権の保障規定は、国又は公共団体と個人との関係を規律するものであって、私人相互間の関係について当然に適用ないし類推適用されるものでないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和43年(オ)第932号同48年12月12日大法廷判決・民集27巻11号1536頁)の示すところである。したがって、私立学校である修徳高校の本件校則について、それが直接憲法の右基本権保障規定に違反するかどうかを論ずる余地はない。所論違憲の主張は採用することができない。
私立学校は、建学の精神に基づく独自の伝統ないし校風と教育方針によって教育活動を行うことを目的とし、生徒もそのような教育を受けることを希望して入学するものである。原審の適法に確定した事実によれば、(1)修徳高校は、清潔かつ質素で流行を追うことなく華美に流されない態度を保持することを教育方針とし、それを具体化するものの一つとして校則を定めている、(2)修徳高校が、本件校則により、運転免許の取得につき、一定の時期以降で、かつ、学校に届け出た場合にのみ教習の受講及び免許の取得を認めることとしているのは、交通事故から生徒の生命身体を守り、非行化を防止し、もって勉学に専念する時間を確保するためである、(3)同様に、パーマをかけることを禁止しているのも、高校生にふさわしい髪型を維持し、非行を防止するためである、というのであるから、本件校則は社会通念上不合理なものとはいえず、生徒に対してその遵守を求める本件校則は、民法1条、90条に違反するものではない。これと同旨の原審の判断は是認することができる。論旨は、独自の見解に立って原判決を非難するか、又は原判決を正解しないでこれを論難するものであり、採用することができない。
その余の上告理由について
所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足り、その過程に所論の違法はない。右事実によれば、(1)修徳高校は、本件校則を定め、学校に無断で運転免許を取得した者に対しては退学勧告をすることを定めていた、(2)上告人の入学に際し、上告人もその父親も本件校則を承知していたが、上告人は、学校に無断で普通自動車の運転免許を取得し、そのことが学校に発覚した際も顕著な反省を示さなかった、(3)しかし、学校は、上告人が三年生であることを特に考慮して今回に限り上告人を厳重注意に付することとし、上告人に対し本来であれば退学勧告であるが今回に限り厳重注意としたことを告げ、さらに、校長が自ら上告人と父親に直々に注意し、今後違反行為があったら学校に置いておけなくなる旨を告げ、二度と違反しないように上告人に誓わせた、(4)上告人は、それにもかかわらず、その後間もなく本件校則に違反してパーマをかけ、そのことが発覚した際にも、右事実を隠ぺいしようとしたり、学校の教諭らに対して侮辱的な言辞をろうしたりする等反省がないとみられても仕方のない態度をとった、(5)上告人は、本件校則違反前にも種々の問題行動を繰り返していたばかりでなく、平素の修学態度、言動その他の行状についても遺憾の点が少なくなかった、というのである。これらの上告人の校則違反の態様、反省の状況、平素の行状、従前の学校の指導及び措置並びに本件自主退学勧告に至る経過等を勘案すると、本件自主退学勧告に所論の違法があるとはいえない。これと同旨の原審の判断は是認することができる。所論は、違憲をも主張するが、その実質は本件自主退学勧告の裁量逸脱の違法をいうものにすぎない。論旨は、帰するところ、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って原判決の法令違背をいうものであって、いずれも採用することができない。
よって、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 井嶋一友 裁判官 小野幹雄 裁判官 高橋久子 裁判官 遠藤光男 裁判官 藤井正雄)