(いわゆる「レッドパージ解雇地位保全仮処分抗告事件最大決」)
 
事件番号 昭和29(ク)223
事件名 地位保全仮処分抗告事件についてなした棄却決定に対する抗告
裁判年月日 昭和35年04月18日
法廷名 最高裁判所大法廷
裁判種別 決定
結果 棄却
判例集巻・号・頁 第14巻6号905頁
 
原審裁判所名 東京高等裁判所  
原審事件番号
原審裁判年月日
 
判示事項
一 民事上の法律行為の効力の判定の基準時。
二 昭和二五年七月一八日付連合国最高司令官の内閣総理大臣あて書簡の趣旨。
 
裁判要旨
一 民事上の法律行為の効力は、特別の規定がないかぎり行為当時の法令に照らし判定すべきものである。
二 昭和二五年七月一八日付連合国最高司令官の内閣総理大臣あて書簡は、公共的報道機関にとどまらずその他の重要産業から共産党員またはその支持者を排除すべきことを要請する連合国最高司令官の指示と解すべきである。
 
参照法条 民法第1編第4章(90条以下),昭和25年7月18日付連合国最高司令官の内閣総理大臣あて書簡
 
 
主    文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人らの負担とする。
 
 
理    由
 抗告代理人青柳盛雄の抗告理由第一点について。
 平和条約発効前においては、わが国の国家機関及び国民は、連合国最高司令官の発する一切の命令指示に誠実且つ迅速に服従する義務を有し(昭和二〇年九月二日降伏文書五項、同日連合国最高司令官指令一号一二項)、わが国の法令は右指示に牴触する限りにおいてその適用を排除されるものであることは、当法廷の判例とするところである(昭和二六年(ク)一一四号、同二七年四月二日大法廷決定、民集六巻四号三八七頁参照)。
 論旨は右と反対の独自の見解を主張するものであるから採るを得ない。
 
 同第二点について。
 一般に民事上の法律行為の効力は、他に特別の規定がないかぎり、行為当時の法令に照らして判定すべきものである。
 原判示によれば、抗告人A、同Bは、いずれも日本共産党員であつて、同人らに対する本件解雇は連合国最高司令官の指示に基いてなされたものであるというのである。そして右連合国最高司令官の指示が、当時わが国の国家機関及び国民に対して、法規としての効力を有するものであつたことは、前示当法廷の判例の趣旨とするところであるから、右指示に基いてなされた本件解雇の効力は、その後右指示が平和条約の発効とともに効力を失つたとしても、何ら影響を被るものではない。所論平和条約発効後は裁判権がない旨の主張は独自の見解に出ずるものであつて、採るを得ない。
 
 同第三点について。
 所論連合国最高司令官の指示が、所論の如く、ただ単に「公共的報道機関」についてのみなされたものではなく、「その他の重要産業」をも含めてなされたものであることは、当時同司令官から発せられた原審挙示の屡次の声明及び書簡の趣旨に徴し明らかであるばかりでなく、そのように解すべきである旨の指示が、当時当裁判所に対しなされたことは当法廷に顕著な事実である。そしてこのような解釈指示は、当時においてはわが国の国家機関及び国民に対し、最終的権威をもつていたのである(昭和二〇年九月三日連合国最高司令官指令二号四項参照)。
 されば原決定が、前示声明及び書簡の趣旨を原判示の如くに解したことは結局正当であつて、何ら所論のような違法は認められない。それゆえ論旨は採るを得ない。
 なお、A及びBを除くその余の抗告人らについては、原決定は右連合国最高司令官の指示に基く解雇により労働契約が終了したと認定したものでないことは、判文上明らかであるから、所論は前提を欠き、これまた採るを得ない。
 よつて、本件抗告はこれを棄却すべきものとし、抗告費用の負担につき民訴八九条を適用し、裁判官全員の一致で主文のとおり決定する。
 
昭和三五年四月一八日
最高裁判所大法廷
裁判長裁判官    田   中   耕 太 郎
裁判官    小   谷   勝   重
裁判官    島           保
裁判官    斎   藤   悠   輔
裁判官    藤   田   八   郎
裁判官    河   村   又   介
裁判官    入   江   俊   郎
裁判官    池   田       克
裁判官    垂   水   克   己
裁判官    河   村   大   助
裁判官    奥   野   健   一
裁判官    高   橋       潔
裁判官    高   木   常   七
裁判官    石   坂   修   一
 
 
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