| 準備書面(9) | 意見書 | |
準 備 書 面(9) 平成15年(行ウ)第60号 損害賠償(住民訴訟)請求事件 原告 松田浩二 外24名 被告 枚方市長 中司 宏 大阪地方裁判所民事7部 御中 2005年1月25日 原 告 松 田 浩 二 印 原 告 宮 下 和 子 印 原 告 高 山 順 子 印 原 告 村 田 孝 子 印 原 告 村 田 拓 印 原 告 渡 辺 洋一郎 印 原 告 渡 辺 光 子 印 原 告 黒 田 伊 彦 印 原 告 黒 田 薫 印 原 告 山 田 光 一 印 原 告 山 本 節 子 印 原 告 山 田 淑 子 印 原 告 佐 藤 信 江 印 原 告 大 田 幸 世 印 原 告 福 山 昌 也 印 原 告 松 田 幹 雄 印 原 告 松 田 久 子 印 原 告 上 野 直 子 印 原 告 鎌 田 恵津子 印 原 告 堀 口 宏 二 印 原 告 西 山 知 子 印 原 告 土 肥 光 一 印 原 告 平 谷 知 寿 印 原 告 石 田 裕美子 印 原 告 石 田 善 彦 印 記 第一 はじめに 被告は平成16年11月2日付準備書面において、「但し、原告らが、『訴外中野の枚方市に対する損害賠償義務』の存在について、明確な主張をしているとは思えない」と述べている。訴外教育長中野の指示によって行われた、枚方市教委による「7点指示」に基づく「本件調査」の違法性は明らかである。そしてそのような違法行為は、それ自身が直接に枚方市と枚方市の公教育に有形無形の多大な損害を与えたと言うことができる。しかしながら、本件住民訴訟の趣旨に即して、原告らは上記被告の指摘に対し、以下のように「訴外中野の枚方市に対する損害賠償義務」について要点を整理するとともに、原告らの主張を補充するものである。 第二 「本件調査」の違法性と損害賠償義務について 1.「本件調査」は違法である。 (1)個人情報保護条例第7条違反 枚方市情報公開・個人情報保護審査会(以下「審査会」という)は2004年9月24日付「異議申立てに対する決定について(答申)」(甲66号証−2・甲67号証−2)(以下「審査会答申」という)において、「本件調査」が条例違反であることを明らかにした。すなわち、「審査会」は、「入学式等の式典における国歌斉唱時の各人の行動は、一般に、思想信条に関わる事項として捉えられているところ」であり「国歌斉唱時に起立しなかったという行動は、当該教職員の思想信条をうかがい知ることができるもの」であると認定した上で、(1)枚方市教委が言う「地教行法23条」および「同43条1項」は枚方市個人情報保護条例第7条2項ただし書「法令の定め」に該当しない。(2)同じくただし書の「審議会の意見を聴いて必要があると認めたとき」の規定によるものでもない、との判断を示している。つまり、訴外市教委が行った「本件調査」は違法な調査であったということである。 (2)教基法第10条違反 本件「7点指示」が教育基本法違反であることを原告らはすでに今までの準備書面で総合的に述べてきた。繰り返さないが、強調しておきたいことは、「本件調査」が「7点指示」に基づくものであり、「7点指示」と「本件調査」は一体のものであるということである。被告は「平成16年1月7日付準備書面6ページ」において「当該教職員の氏名と起立しなかった理由の聴取が必要不可欠である」と述べている。そして「本件調査」を正当化するために学習指導要領や「地教行法」を持ち出してきたのは、ほかならぬ被告のほうなのである。「地教行法」に規定された「権限」の行使を「不当な支配」とされないために持ち出さざるを得なかったのが学習指導要領であり、問題の「国旗・国歌」項目である。教育基本法を正しく条理解釈し、「旭川学テ判決」に即して判断するならば、「本件調査」と、「本件調査」に帰結する「7点指示」が不当な支配にあたる違法行為であることは明白である。 (3)憲法第19条、13条違反 ア)個人情報保護条例第7条2項は、日本国憲法第19条を具体的に保障するものであり、また個人情報保護条例は、日本国憲法第13条が保障するプライバシーの権利を保護するものとしてある。「本件調査」がそれらに違反することは明らかであって、それゆえに、「審査会答申」は、一般的な服務監督権限等に、思想・信条や個人の領域に属する事柄を安易に取り込んでしまう、訴外市教委の独善的な言い分を認めないという当然の認識を示したのだと言うことができよう。 イ)「本件調査」は「君が代」の起立斉唱という行為を通じた「思想調査」であることは言うまでもないが、同時にそれは、同じく「君が代」の起立斉唱という行為を通じた「踏み絵」にほかならない。「内心の自由」を直接に否定することができない場合、「指示」あるいは「命令」を通じ、ある行為を強制することによって、内心と外形的行為との分裂を強要し、事実上「内心の自由」を奪っていく手法が「隠れキリシタン」弾圧で有名な「踏み絵」である。「本件調査」は「踏み絵」を禁止した憲法第19条に明らかに違反するものである。 (4)国際条約違反 国際人権規約 B規約 第18条 世界人権宣言 第18条 どちらも「思想・良心の自由」に関するものであって、「本件調査」はこれらに違反している。 2.訴外中野は損害賠償義務を負っている。 (1)教育長は事務局の責任者である。 地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という)第17条と20条によって、教育長の権限と責任は明らかである。 <地教行法> ・第十七条 教育長は、教育委員会の指揮監督の下に、教育委員会の権限に属するすべての事務をつかさどる。 ・第二十条 教育長は、第十七条に規定するもののほか、事務局の事務を統括し、所属の職員を指揮監督する。 教育長はすべての事務をつかさどる事務局の責任者として指揮監督権限を有している。「本件調査」は訴外中野の指揮監督の下に市教委事務局の職務として行われた。 (2)「枚方市立学校長に対する事務委任規程第2条2項」(甲50号証)(以下「規程2条2項」という)について ア)訴外中野は、「平成10年度第7回校長会」(1999年1月18日)で「卒業式での校長の取組として、次のことを指示します」と述べて3点の指示をしているが(甲31−5)、その指示が「枚方市立学校長に対する事務委任規程第、2条2項によるもの」だと自ら明言している。この訴外中野によって行われた指示が、「本件調査」時および今日の「7点指示」へと拡大強化されていく原型である。 イ)しかしどうしてこの指示が「規程2条2項」の「重要かつ異例の事態」に該当するのかという原告らの求釈明に対して、被告は「学習指導要領がその趣旨に基づいて適正に実施されることについて、これを重点課題と位置づけていた」(平成16年11月2日付準備書面)からと答えるのみである。何故に「国旗・国歌」が学習指導要領の中で重点課題なのかという原告らの問いに、またどうしてそれが殊更に「規程2条2項」の言う「重要かつ異例の事態」に該当するのかという問いに、被告は答えることができない。それどころか被告は「平成16年3月5日付準備書面」において、「訴外市教委は、原告らの言う『国旗・国歌項目』だけではなく、すべての教科・領域において、学習指導要領に基づき、各学校が適切に教育課程を編成し、実施するように指導しているものである。」と述べている。つまり、「国旗・国歌」だけを重点的に取り上げているわけではないと釈明しているのである。このように、被告の主張には客観的で合理的な一貫した理由がないばかりか、訴外教育長中野が恣意的かつ不適法にその権限を行使したものといわざるを得ないのである。 3.まとめ 被告は平成16年11月2日付準備書面において「訴外中野一雄が、その任務に背き、そのことによって、枚方市に対し損害賠償義務を負っているとの原告らの主張が認められるか否かという点が争点となっている」と言う。この見解に異存はない。しかしながら、被告のこの説明は、いくつかの名称を取り替えれば、多くの住民訴訟に当てはまる一般的な定義を言うにすぎず、本件訴訟の本案が持つ固有の争点を何ひとつ示してはいない。そして被告は同準備書面で「本件調査は『教育課程』に関する事務・執行の一環として、および、教職員の服務監督権限の行使としてされた適法なものであり、したがって、訴外中野の枚方市に対する上記損害賠償義務は存しない」と一足飛びに結論づけるのである。このように、被告の主張は徹頭徹尾、その権限における形式論(あるいは形式万能論)の域を出ないものとして繰り返されてきた。 しかし、この訴訟の本案における真の争点は、訴外中野の指示によって行われた「本件調査」が、「(踏み絵でもある)違法な思想調査」であったか否か、という点にこそ求められるべきである。 「日の丸・君が代」(国旗・国歌)に自分がどう向き合うかという問題は、万人が認める個人の思想・信条・良心・信仰に関わる問題である。そのことは「審査会答申」のみならず、国会や判例も認めるところである。 それがゆえに、枚方市個人情報保護条例第7条2項が禁止する項目に該当するものとされ、「本件調査」を行った市教委の権限の法的根拠の当否が問われたのは当然のことなのである。また、個人の人格の自発的な発達を援助する教育という人間的営みにあって、思想・良心の自由は格段の配慮と保障がなされなければならないことも、教育基本法第10条の「不当な支配の禁止」について判示した「旭川学テ最高裁判決」の命ずるところである。「国旗・国歌」の学習は、これらのことを前提としてなされる場合にのみ、教育の本質との齟齬を生じることもなく、公共の福祉や教育諸法制とも合致するものとして捉えることができるはずである。したがって、厳格な違憲性に関する精査もなければ、「旭川学テ判決」についてもまったく触れようともしない被告が言うところの「本件調査の適法性」には理由がない。 そして、このきわめてセンシティブな、社会の一員でもある個人の人格の根本に位置する問題に対し、思想・良心の自由という、ほんらいならば、その基本的人権を最も尊重し、またはそれを率先して配慮すべき他ならぬ教育委員会によって、全く正反対の「本件調査」が行われたことは、悲しむべきことであり、責を負うべき重大な違法行為がなされたと言わなければならない。 第三 結論 以上のように、訴外教育長中野の責による、本件違法な「調査」に対して、被告市長は「本件調査」に従事した職員の(本件調査にかかる)給与75,000円を、ほんらい減額して支給すべきところ、減額することなく支給した。その給与の支給がそれ自体は適法な行為であったとしても、そのために枚方市は上記損害を被っている。また、「本件調査」のために使った事務用紙等の費用として100円以上の損害を枚方市は被った。被告はこれらに対する損害賠償を、怠る事実に係る相手方、訴外中野に請求しなければならない。 以 上 |
意 見 書 平成15年(行ウ)第60号 損害賠償(住民訴訟)請求事件 原告 松田浩二 外24名 被告 枚方市長 中司 宏 大阪地方裁判所民事7部 御中 2005年1月25日 原 告 松 田 浩 二 印 原 告 宮 下 和 子 印 原 告 高 山 順 子 印 原 告 村 田 孝 子 印 原 告 村 田 拓 印 原 告 渡 辺 洋一郎 印 原 告 渡 辺 光 子 印 原 告 黒 田 伊 彦 印 原 告 黒 田 薫 印 原 告 山 田 光 一 印 原 告 山 本 節 子 印 原 告 山 田 淑 子 印 原 告 佐 藤 信 江 印 原 告 大 田 幸 世 印 原 告 福 山 昌 也 印 原 告 松 田 幹 雄 印 原 告 松 田 久 子 印 原 告 上 野 直 子 印 原 告 鎌 田 恵津子 印 原 告 堀 口 宏 二 印 原 告 西 山 知 子 印 原 告 土 肥 光 一 印 原 告 平 谷 知 寿 印 原 告 石 田 裕美子 印 原 告 石 田 善 彦 印 記 1.被告も認めるとおり、本件において、原告らは訴外教育長中野が教育行政法規と個人情報保護施策に背いて行った「本件調査」による損害の償いを同人に求めることを被告に求めている。 訴外中野が「本件調査」に対し、「地教行法」上の責任を有することは明らかである。 そして同人が「本件調査」にどのように関わったのかは、すでに出されている書証等によってある程度はうかがい知ることができるとしても、さらに具体的には、なお多くの事を同人に尋ねる必要がある。 たとえば被告は「本件調査」が行政法規上の「教育課程の実施」に関する権限に基づくことを理由に、個人の思想・良心の自由を侵すものではないかのように言う。 訴外中野の損害賠償責任は明らかであるが、このような法的権限に基づく行政行為は、思想の自由を侵さないかのような認識が本件調査の当時、訴外中野に固有のものだったのか、それとも枚方市行政において普遍的なものであって、訴外中野を問責するに当たって斟酌すべき情状が存したのかは、賠償額の量定において、判決に影響することがないとは言えない。 これは証人の意見や見解を求めるのではなく、「本件調査」当時の証人の認識について、事実の報告を求めるものであり、これじたい、市民が判決をより良く理解できるための「情報」でもある。 したがって、ほんらいなら、あるいは被告が証人申請し、または訴外中野が訴訟参加してもよかったのであるが、このどちらもなされていないので、あえて原告らが証人申請をしている。 裁判所は証人調べを「できる」のであり(民訴法第181条、190条)採用「すべきではない」などというような言い方は、訴訟指揮権に対する侵害である。 2.被告は原告らの求釈明に対しても誠実に答えているとは言い難い。訴外市教委は04年9月24日付・個人情報保護審査会答申を拒否したが、これは初めてのことである。1998年に枚方市議会が制定した情報公開・個人情報保護条例が施行されて以降、本件答申で24号を数えるが、実施機関が、「審査会」が出した答申を拒否した例はなかった。 そして、訴外市教委は「本件調査」以後も、2003年、2004年と「不起立調査」(氏名のみ)を行っている。2005年の卒業式に向けた「7点指示」(甲77号証)もすでに出されている。 原告らの請求は、訴外中野に対して被告が損害賠償を請求することを求めるものである。その訴外中野を証人として、同人によってもたらされた憲法と条例違反の事実、不当な教育支配の事実、これらの市教委事務局の職務として行われた違法な事実を詳細に明らかにすることは必要である。違法な指示が生み出された背景、あるいは市に損害を与え続ける原因としての教育長の「本件調査」時の認識は、被告が言うところのたんなる「意見・見解」とは異なる、施策と不可分のものである。そして3人の教員の証言は、違法な「本件調査」の事実を有機的に補完するものとしてある。 「平成14年度入学式の国歌斉唱時、起立しなかった教職員調査」(甲2・3号証)の「起立しなかった理由」の欄はすべて真っ黒に墨ぬりされている。部分公開決定通知書(甲9号証)によれば、「思想、信条、信仰等に関する個人情報」だから公開できないという理由である。すべて「思想・信条・信仰に関する個人情報」で埋められているならば、それを収集するつもりではなかったと言う訴外市教委は、どのような情報を集めようとし、また集めたのであろうか。尋問事項は事実を調べるための端緒である。 申請した4名の証人が採用されることを強く望むものである。 以 上 |