最高裁3小 判決 82.04.13 昭52(行ツ)122 不当労働行為救済命令取消 棄却  伊藤裁判官の補足
             【ホテルオークラ】(民事判例集36巻4号659頁)  原審 東京高裁 77.08.09  1審 東京地裁

判示事項  ホテル従業員の労働組合の「リボン闘争」が、正当な労働組合活動にあたらないと された事例
要   旨
 ホテル業を営む会社の従業員で組織する労働組合が、ホテル内において就業時 間中に組合員たる従業員が各自「要求貫徹」等と記入したリボンを着用するというリ ボン闘争を実施した場合において、その目的が、主として、結成後三か月の同組合の 内部における組合員間の連帯感ないし仲間意識の昂揚、団結強化への士気の鼓舞とい う効果を重視し、同組合自身の体造りをすることにあつたなど判示のような事情があ るときは、このリボン闘争は、就業時間中の組合活動であつて、労働組合の正当な行 為にあたらない(労働組合法7条

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。

         理    由
 上告代理人馬場正夫、同田中庸夫、同西道隆の上告理由について
 本件リボン闘争について原審の認定した事実の要旨は、参加人組合は、昭和四 五年一〇月六日午前九時から同月八日午前七時までの間及び同月二八日午前七時から 同月三〇日午後一二時までの間の二回にわたり、被上告会社の経営するホテルオーク ラ内において、就業時間中に組合員たる従業員が各自「要求貫徹」又はこれに添えて 「ホテル労連」と記入した本件リボンを着用するというリボン闘争を実施し、各回と も当日就業した従業員の一部の者(九五〇ないし九八九名中二二八ないし二七六名) がこれに参加して本件リボンを着用したが、右の本件リボン闘争は、主として、結成 後三か月の参加人組合の内部における組合員間の連帯感ないし仲間意識の昂揚、団結 強化への士気の鼓舞という効果を重視し、同組合自身の体造りをすることを目的とし て実施されたものであるというのである。
 そうすると、原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、本件リボン闘争 は就業時間中に行われた組合活動であつて参加人組合の正当な行為にあたらないとし た原審の判断は、結論において正当として是認することができる。原判決に所論の違 法はなく、右違法のあることを前提とする所論違憲の主張は、失当である。論旨は、 採用することができない。
 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判 官伊藤正己の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決す る。

 裁判官伊藤正己の補足意見は、次のとおりである。
 上告理由第一点の所論は、要するに、本件リボン闘争は参加人組合の正当な争 議行為にあたるものであるし、更に、それが争議行為にあたらないとしても、労働組 合の正当な組合活動の範囲内に属するものであつて、いずれにしても、被上告人がそ れを理由に就業規則に基づいて本件各懲戒処分をしたことは不当労働行為にあたる、 と主張するものである。これに対して、法廷意見は、本件リボン闘争は就業時間中の 組合活動であつて、参加人組合の正当な行為にあたらないと判示している。私もまた それに同調するが、この判断は、労働組合の団体行動の正当性について重要な論点を 提起するものであるから、いささか私見を補足しておきたい。
 一 労働組合の争議行為とは何かを明確に定義づけることは困難であり、恐ら くは、労働組合の団体行動が争議行為にあたるとすることによつてどのような法的効 果を生ずるかに応じて多少とも異なる意味をもつものとして理解されるべきものと思 われるが、一般的にいえば、労働組合が、その主張の示威又は貫徹のためにその団体 の意思によつて労務を停止すること(怠業や残業拒否のように不完全な停止を含む) が争議行為に該当すると解される。この立場にたつても、たとえば労働組合法による 民事免責等に関して、このような争議行為に随伴してされる行為(ピケ行為等)も争 議行為のうちに含ましめることはありうるが、このような随伴的行為はそれ自体とし て争議行為とはならない。そう考えると、業務の性質によつては、リボン闘争自体が 労務の停止に等しいと考えられる場合がありえないものではないから、一切のリボン 闘争が争議行為にあたらないとすることはできないとしても、一般的には、リボン闘 争は、類型として争議行為にあたらないというべきである。原審の適法に確定した事 実によれば、本件リボン闘争は、法廷意見の示すような態様で行われたのであるか ら、これを争議行為としてとらえることは相当ではない。したがつて、争議行為に就 業規則が適用されるかどうか、また具体的な本件リボン闘争が争議行為として正当性 をもつかどうかを判断する必要はないと考えられる。
 二 それでは、本件リボン闘争を労働組合の組合活動としてとらえるときに、 その正当性を認めることができるか。いわゆるリボン闘争は、労務を停止することな く、就業時間中に労働組合員である労働者が組合の決定に基づき一定のリボンを着用 する形態をとるものであるから、ここでは、就業時間中にこのような組合活動が許さ れるかどうかが問題となる。
  一般に、就業時間中の組合活動は、使用者の明示又は黙示の承諾があるか又 は労使の慣行上許されている場合のほかは認められないとされているが、これは、労 働者の負う職務専念義務、すなわち労働契約により労働者は就業時間中その活動力を もつぱら職務の遂行に集中すべき義務を負うことに基づくものとされている。もしこ の義務を厳格に解し、およそ就業時間内においては、職務の遂行に直接関連のない活 動が許されないとすれば、当然に、組合活動をすることは認められず、リボン闘争は 違法と判断されることとなる。当裁判所は、政治的内容をもつ文言を記載したプレー トの着用行為につき、すべての注意力を職務遂行のために用い職務にのみ従事すべき 義務に違反し、職務に専念すべき職場の規律秩序を乱すものであると判断している (昭和四七年(オ)第七七七号同五二年一二月一三日第三小法廷判決・民集三一巻七 号九七四頁)。この判旨は、職務専念義務について、就業時間中には一切の肉体的精 神的な活動力を職務にのみ用いるべきであるという厳格な立場をとつたものとみられ るが、このプレート着用が組合の活動でなかつたこと、プレートに記載された文言が 政治的な内容のものであつて、その着用が政治活動にあたること、それが法律によつ て職務専念義務の規定されている公共部門の職場における活動であつたことにおい て、本件とは事案を異にするといつてよい。
  労働者の職務専念義務を厳しく考えて、労働者は、肉体的であると精神的で あるとを問わず、すべての活動力を職務に集中し、就業時間中職務以外のことに一切 注意力を向けてはならないとすれば、労働者は、少なくとも就業時間中は使用者にい わば全人格的に従属することとなる。私は、職務専念義務といわれるものも、労働者 が労働契約に基づきその職務を誠実に履行しなければならないという義務であつて、 この義務と何ら支障なく両立し、使用者の業務を具体的に阻害することのない行動 は、必ずしも職務専念義務に違背するものではないと解する。そして、職務専念義務 に違背する行動にあたるかどうかは、使用者の業務や労働者の職務の性質・内容、当 該行動の態様など諸般の事情を勘案して判断されることになる。このように解すると しても、就業時間中において組合活動の許される場合はきわめて制限されるけれど も、およそ組合活動であるならば、すべて違法の行動であるとまではいえないであろ う。
  そこで、所論のように本件懲戒処分が不当労働行為となるためには、原審の 適法に確定した事実関係のもとにおいて、右のような見解に照らして本件リボン闘争 が正当として許されるものでなければならない。この点に関しては、原審が本件リボ ン闘争の特別違法性として説示するところは是認することができ、したがつて、本件 リボン闘争は、参加人組合の組合員たる労働者の職務を誠実に履行する義務と両立し ないものであり、被上告人の経営するホテルの業務に具体的に支障を来たすものと認 められるから、それは就業時間中の組合活動としてみて正当性を有するものとはいえ ない。
 三 なお、服装規定の違反に関する所論についても、一般にリボン闘争が使用 者の定める服装規定に違反して正当性を欠くものであるかどうかはともかく、原審の 適法に確定した事実関係のもとでは、本件リボン闘争が被上告人経営のホテルにおい て服装規定に違反するものであるから正当な行為たりえないとした原審の判断は、正 当として是認することができる。
 以上の理由により、私は、原審の判断は結論において正当と認めるのであり、 論旨は採用することができないと考える。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    環       昌   一
            裁判官    横   井   大   三
            裁判官    伊   藤   正   己
            裁判官    寺   田   治   郎
770809okura-kosai 東京高裁 77.08.09【オークラ】 原審 東京 地裁 75.03.11

       主   文
本件各控訴をいずれも棄却する。控訴費用は控訴人らの負担とする。

       事   実
 控訴人ら代理人は、「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用 は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人代理人 は、控訴棄却の判決を求めた。 当事者双方の事実上の主張及び証拠の関係は、原判 決事実摘示のとおりであるから、それをここに引用する(ただし、原判決八枚目裏一 〇行目「衝量」を「考量」と訂正する。)

       理   由
 一 当裁判所も、本件全資料を検討した結果、被控訴人の本訴請求は理由があ ると判断するものであつて、その理由については、次のとおり付加、訂正するほか、 原判決の理由説示と同一であるから、それをここに引用する。
1 原判決二八枚目裏三行目「参加人本人Aの」を「成立について当事者間に争 いのない甲第六号証の一、第三二号証、乙第一号証の六、控訴人(第一審参加人) (以下「参加人」という。)A、同Bの各」と改め、六行目「それにもまして」の次 に「控訴人(第一審参加人)ホテルオークラ労働組合(以下「参加人組合」とい う。)は昭和四五年六月一九日ころ約四五〇名の組合員をもつて結成されたばかりで あつたから、」を加える。
2 三三枚目表一、二行目の全部を削り、三行目「ついては」を「ついて」と改 め、四行目「べきものがあ」を削り、五行目「成立」の前に「前顕甲第六号証の 一、」を、「第五号証」の次に「の一、第七号証」を、六行目「各一、」の次に「証 人Cの証言により真正に成立したものと認められる甲第六号証の二、」をそれぞれ加 え、三四枚目表六行目「規制している」の次に「こと、そのため、例えば、男子従業 員は白いワイシヤツを着用することを要し、女子従業員にあつてはカラーのマニキユ アをしたり、ブローチ等を付けることも禁じられ、また、客が従業員に対し記念とし てバツチなどを贈り、これを衣服などに付けさせた場合にも、ホテル側がその客に断 つたうえこれを取り外させていた」を加える。
3 原判決三五枚目表九行目「休らい」とあるのを「休らぎ」と訂正し、同裏五 行目の次に次の文章を加える。
 「前記二の1ないし3及び三の事実に加え、前顕甲第五号証の一、成立につい て当事者間に争いのない乙第三号証の一、証人Dの証言、参加人B尋問の結果並びに 弁論の全趣旨を総合すれば、参加人組合もまた、組合員がホテル内で勤務中リボンを 着用して客に接することはホテル側及び従業員において日頃客に対して心掛け、ま た、努力している心のこもつたサービスをするということと相対立、矛盾するもので あつて、被控訴人の経営するホテルの営業を著しく阻害することになるということを 十分承知していたが、参加人組合の執行委員会はあえて本件リボン闘争を行うことを 決定したこと、当時執行委員長であつた参加人Bは休暇をとつたうえ、いわゆる三役 である参加人E、同F、同G及び同Aらと協議しながら本件リボン闘争を指揮したこ と、しかし組合員総数約四五〇名のうち半数近くの者はリボンを着用しなかつたこ と、ホテル側ではリボンを着用した組合員のうち客面に出る者についてはこれを控室 に退かせるなどしてそのやり繰りをしたが、万全を期することができなかつたこと、 そのため客からホテル側に対して非難が寄せられたことが認められ、右認定を覆する に足りる証拠はない。」
4 原判決三五枚目裏六行目「ホテル業におけるいわゆる」を「本件」と改め、 同「闘争は、」の次に「参加人組合において被控訴人の経営するホテル内で勤務中積 極的にその営業を妨害する行為を続けていたものというべきであつて、」を加え、八 行目「ホテル業の使用者」を「被控訴人」と、九行目「と解すべきである。」を「と いわざるをえないが、他方、本件リボン闘争に参加した組合員の人数その他諸般の事 情を考慮すると、被控訴人側においてロツクアウトによつて右闘争に対抗することが 許される状況にあつたとまでは認めることができないものといわざるをえない。」と それぞれ改め、一〇行目「本件リボン」の前に「そうすると、」を加え、同「まえに みたとおり」から三六枚目表一行目「ほかならないから、」までの全部を削る。
 二 以上の次第で、被控訴人の本訴請求を認容した原判決は相当であるから、 本件各控訴はこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第九五 条、第八九条、第九三条第一項本文を適用し、主文のとおり判決する。
 (裁判官 枡田文郎 福間佐昭 古館清吾)
東京地裁 75.03.11【オークラ】  理由
       主   文
1 被告が、参加人ホテルオークラ労働組合他六名が申立人であり、原告が被申立
人である都労委昭和四六年不第二号不当労働行為救済申立事件について、原告に対
し、昭和四七年一〇月二日に同年九月一九日付命令書の写しを交付してした命令の
うち、別紙記載部分を取り消す。
2 訴訟費用は、参加によつて生じたものは参加人らの負担とし、その余は全部被
告の負担とする。
       事   実
第一 当事者の申立て
一 原告の求める裁判
 主文第一項と同旨及び「訴訟費用は被告の負担とする。」との判決
二 被告の求める裁判
 「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決
第二 当事者の主張
一 請求の原因
1 被告は、参加人ホテルオークラ労働組合他六名が申立人であり、原告が被申立
人である都労委昭和四六年不第二号不当労働行為救済申立事件について、原告に対
し、昭和四七年一〇月二日に同年九月一九日付命令書の写しを交付し、同命令書主
文第一項によつて別紙記載のとおり救済の一部を認容する命令を発した。以下この
命令を「本件救済命令」という。
2 しかし、本件救済命令は違法であるから、その取消を求める。
二 被告の主張
 被告は、請求原因事実を認め、本件救済命令について次のとおり主張した。
1 当事者関係
 原告はホテル業等を営む株式会社で、肩書地にて「ホテルオークラ」を経営し、
その従業員数は約一二〇〇名である。参加人A、B、C、D及びEはホテルオーク
ラの従業員で、参加人ホテルオークラ労働組合(以下「組合」という。)の組合員
である。参加人組合は原告の従業員をもつて組織するいわゆる企業別労働組合であ
り、参加人全日本ホテル労働組合連合会(以下「ホテル労連」という。)はホテ
ル、旅館及び料理飲食業に従事する労働者をもつて組織された連合体労働組合であ
り、したがつて参加人組合はホテル労連の単位組合である。
2 救済の申立て
 原告は、原告の従業員に対する懲戒として、参加人A、B、C、D及びEに対
し、それぞれ、昭和四五年一〇月一三日に平均賃金の半日分を減給する旨の処分
を、同年一一月一七日に譴責する旨の処分をした。そこで右参加人五名のほか、参
加人組合及びホテル労連は、右懲戒処分がいずれも不当労働行為に該当するとし
て、昭和四六年一月二〇日に原告を相手方として被告に対し右の減給処分及び譴責
処分を取り消すこと、及び右減給処分に係る賃金相当額が支払われるべきことなど
の救済の申立てをした。
3 不当労働行為の成立
(一) 減給処分
(1) 参加人組合は、昭和四五年九月二一日原告に対して一律一万円プラス年齢
別二〇〇〇円ないし一万七〇〇〇円の賃上げを要求し、以後三回にわたる団体交渉
を経て原告から提示された平均九〇〇二円の賃上げ回答を不満として同年一〇月三
日にスト権を確立するとともに右要求を貫徹する目的をもつて就業時間中に一斉に
リボンを着用するいわゆるリボン闘争を敢行することを決定したうえ、同日原告に
対し同月五日迄に原告の誠意ある回答が示されない場合は同月六日午前九時よりリ
ボン闘争を行う旨通告した。しかし右通告に対し同月五日に前記回答額に一〇〇〇
円を上積みする旨の回答があつたが、参加人組合はこれをも不満として同月六日午
前九時から八日午前七時までリボンを着用するように組合員に指令してリボン闘争
を実施した。これに従い六日には二二八名(うち客面に出る者約二五名)、七日に
は二七六名(うち客面に出る者約五九名)の組合員が通常その上衣のネーム・プレ
ートの下にリボンを着用した。右リボンの形状は、直径六センチメートルの紅白の
花形に長さ六センチメートル、幅約二センチメートルの白布が付いていてこれに
「要求貫徹」と黒書してあるもの、又は直径約五センチメートルのピンク色と白色
の花形に長さ約六センチメートル、幅約二センチメートルの白布が付いていてこれ
に「要求貫徹ホテル労連」と朱書してあるものであつた。
(2) 原告は、参加人組合の右リボン着用通告に接し、同日参加人組合に対して
リボン着用を禁止する旨及び着用して就業した場合は断乎たる処置をとる旨の警告
書を渡すとともに会社施設内に「告」と題する右警告書同旨の掲示を張り出した。
そしてリボン着用者に対しては、職制を指揮して、リボンを外すように説得し、そ
れでも応じないリボン着用者は客の目に触れない部署にまわしたり、また組合員が
リボンを着用したまま客面に出ようとするときは直ちにリボンを外すよう注意した
りした。そのためリボンを着用した組合員の大部分は客面に出るときはリボンを外
していたが、なかには職制の制止を聞かずリボンを着用したまま客面に出る者もあ
つた。そこで原告は、参加人A、B、C、D、E及び訴外Fの六名の者がいわゆる
組合三役として各職場において就業時間中の組合員にリボンの着用を指令し就労さ
せたことは、就業規則三〇条三号、六八条二号及び三号の各規定に違反するとし
て、同月一三日に右六名の者に対し就業規則六七条二号を適用してそれぞれ平均賃
金の半日分を減給する旨の懲戒処分に付した。
(二) 譴責処分
(1) 参加人組合は同月二四日に団体交渉の席上で原告から平均一万一二六一円
の賃上げの回答を得たが、同月二七日の団体交渉の席上で、(1)右二四日の会社
回答に対するあと一歩の上積み回答、(2)リボン着用者に対する処分の撤回、
(3)交渉経過を組合員に知らせるための会場の貸与の三点を要求し、原告の拒否
により団体交渉が決裂したので同日午後一一時過ぎに原告に対し同月二八日午前七
時からリボン闘争に入る旨を通告したうえ、同月二八日午前七時から同月三〇日午
後一二時迄のリボンの着用を指令してリボン闘争を実施した。これに従い、二八日
に二五六名(うち客面に出る者約五〇名)、二九日に二四三名(うち客面に出る者
約四九名)、三〇日に二三三名(うち客面に出る者約四〇名)の組合員が前回と同
様のリボンを着用した。
(2) 原告は、参加人組合の右闘争通告に接し、同参加人に対し即座にこれを禁
止する旨の警告文を手交したが、参加人A、B、C、D、E及び訴外Fの六名の者
が原告の警告を無視してリボンを着用して就労したのみならず各職場組合員にリボ
ンの着用を指令し就労せしめたとして、前記減給処分の際の就業規則該当条項のほ
か七二条の規定を加えて、同年一一月一九日に右六名に対しそれぞれ譴責する旨の
懲戒処分に付した。
(三) 争議行為の正当性
(1) 参加人組合は、賃上げに関して再三の団体交渉にもかかわらず労使双方の
主張が一致せず、そこで組合の団結を誇示し団体交渉における自己の主張を有利に
導きこれを貫徹することを目的として就業時間中の一斉リボン着用を決定し、その
つどリボン闘争に入る旨を原告に通告したうえこれを実施したもので、それが日常
業務阻害行為なのであるから、争議行為の一類型に属するといわなければならな
い。
(2) リボンの形状及びその着用方法は前記のとおりであり、争議行為として
は、一般的には勿論のこと、ホテルとしての業種の特殊性、及び特に身嗜みについ
て厳格である原告の場合を考慮しても、特に不体裁或いは不当と断ずるほどのもの
ではなく、原告の忍容の限度を逸脱するものではない。
(3) リボン着用者はおおよそ当日出勤者の四分の一程度で、客面に現われたも
のは多くともその五分の一程度である。
又、争議行為遂行の監視をめぐつて原告と参加人組合役員間に若干の紛争があり、
多少不体裁な事態が発生したが、これらの事態が特に勤務の秩序に不当に混乱を生
ぜしめその勤務内容を不当に低下せしめる程度に迄達したものとはいえない。
(4) 争議行為の不当性の判断に際しては、業種の特殊性や当該会社の信用等も
衡量すべきであり、この場合また原告が有する自己のホテルの品位についての「誇
り」と「見識」も無視すべきでないのは当然である。しかし、原告が、この「誇
り」や「見識」の絶対的尊重を紛争時において迄も相手方たる参加人組合に押しつ
けるのは身勝手である。その他本件リボン闘争を不当と断ずる事情は存しない。
(5) 仮りに本件リボン闘争が争議行為であるか否かに疑問があるとしても、本
件リボンの形状、着用の態様や方法等が前記のとおりであつて常識的な範囲を著し
く逸脱して原告の受忍の限度を超えるものとはいい難く、かつその着用は労使の紛
争中に行われたものであることを考慮すれば、本件リボン闘争はなお労働組合の正
当な行為の範囲内にあると解さざるを得ない。
(四) 懲戒処分の不利益取扱性
 前記3の減給処分及び4の譴責処分は、参加人組合の本件リボン闘争に対して、
就業規則三〇条三号、六八条二号、三号、六七条二号(譴責処分につきさらに七二
条)を適用して行なわれたものである。しかし就業規則はもともと従業員の平時的
勤務に関する規律であるから、労働組合の争議行為に対しては、原則として適用し
えない。もつとも、本件リボン闘争においては、争議参加者は同時に就労している
わけでもあるので、たとえ争議行為であろうとも、その就労の状態が著しく職場の
秩序を害し、或いは労務提供が平常の状態に比しその内容において著しく量的・質
的低下を来たすものであつてはならないことは当然であり、又その限度を越えない
限りでは、使用者においても、たとえ職場秩序の紛糾や勤務内容の低下が発生しよ
うとも、これを忍容しなければならないところ、本件リボン闘争が原告の忍容の限
度を逸脱し、その職場秩序の混乱及び勤務内容の低下が不当な程度に達したものと
はいえないことはすでにみたとおりである。
 そうすると、参加人Aらに対する本件各懲戒処分は、結局参加人組合の正当な争
議行為に対して就業規則を適用して行なわれたものであるから、労働組合法七条一
号の不当労働行為たる不利益取扱いにあたるといわなければならない。
4 救済の認容
 そこで、被告は、公益委員会議の合議により、参加人らの申立に係る救済の一部
(別紙記載のとおり)を理由があると判定して、原告が参加人ら(ただし、組合及
びホテル労連を除く。)に対して前記減給及び譴責処分を取り消し、かつ、右減給
に係る賃金額相当の金員を支払うべき旨の本件救済命令を発した。
四 参加人の主張
 本件リボン闘争は正当な組合活動である。即ち、リボン闘争は衣服にリボンを付
ける行為によつて一切の有形的行為が完了し、その後格別の行為を必要としないの
であるから、労働者が就業時間中にリボンを着用しても何ら精神的肉体的活動を低
下させず充分な労働力を提供しており、しかも労働者は就業時間中といえども団結
権及び団体行動権を保持しているから、就業時間中の組合活動として行うリボン着
用を規制すべき根拠はない。又本件リボンの形状やその着用の態様は通常のもので
あり、客面に華々しく出るような特に刺激的な態様で行い特別に原告の名誉を毀損
し或いは不当な損害を与えるものではなかつたから、全く正当なものである。従来
帝国ホテルや第一ホテル等の一流ホテルにおいても就業時間中における従業員のリ
ボン、腕章、はち巻きの着用は闘争戦術の慣行と化し、世人もこれを怪しまない
し、仮りに原告の顧客中に労働者の団結要求そのもの、引いてリボン着用に対し不
快感を抱くものがあるとしても、右感情は法律の保護に値しないものである。
五 被告及び参加人らの主張に対する原告の認否
 被告主張事実1及び2は認める。同3、(一)、(1)のうち参加人組合が被告
主張のとおりスト権を確立したこと、リボンの白布部分に「ホテル労連」と印刷さ
れたものがあつたこと、リボン着用者中客面に出る者の員数が被告主張のとおりで
あつたことを否認し、その余の事実を認める。同3、(一)、(2)のうち、リボ
ンを着用した組合員の大部分が客面に出るときはリボンを外していたことは否認
し、その余は認める。同3、(二)、(1)のうち参加人組合が一〇月二四日の会
社回答に対するあと一歩の上積み回答を要求したこと、リボン着用者中客面に出る
者の員数が被告主張のとおりであつたこと、参加人組合がその指令において当初か
らリボン着用の終期を一〇月三〇日午後一二時迄としたことは、いずれも否認し、
その余の事実は認める。同3、(二)、(2)及び同4は認める。同3、(三)及
び(四)並びに同四は争う。
六 原告の反論
 本件救済命令は、次の理由により違法である。
1 本件リボン闘争は争議行為ではなく就業時間中の組合活動である。即ち、争議
行為とは業務の正常な運営を阻害するもので、かつ労働者の不就労状態ないし怠業
的状態を惹起するものであるが、本件リボン闘争は何ら不就労状態を惹起する形態
のものではなく、参加人組合自身についても平常の就労状態の過程において労働組
合の団結力の示威と使用者に対する経済的、心理的圧迫を与える一の組合活動とし
て実施したものである。また参加人組合は当時において原告に対し何ら争議行為の
通告をしておらず、リボン着用をストライキ等の争議行為に附随する一闘争手段と
して行つたものでもなく、さらに被告における本件審問手続においても終始本件リ
ボン闘争は就労時間中の単なる組合活動にすぎないことを自認していたものであ
る。したがつて、本件リボン闘争を争議行為と断定して本件各懲戒処分を不当労働
行為にあたるとした本件命令は違法である。
2 本件リボン闘争は、以下に述べる如く就業時間中の組合活動としては、その限
度を越えて従業員の本旨に従つた労務の提供を著しく妨げ、かつ会社業務の運営上
重大な障害を与えたものであつて、到底正当な組合活動として許容することはでき
ない。
(一) 原告ホテル業の特殊性
 原告は国際人として知られた故Gの意志のもとに従来のホテルに関する考え方に
とらわれることなく、国際的感覚と視野から世界最高級の顧客を対象として世界第
一級のホテルを目標に設立されたもので、既に開業前から担当者を海外一流ホテル
に派遣して国際的感覚に裏付けられた知識と技術を習得させるとともにこれに基づ
いて一般従業員の教育訓練にあたらせることとし、一般従業員も開業の趣旨に則り
ホテル勤務経験者以外の者を中心に開業二年前に採用し、国内一流ホテルで一般的
知識経験を習得させたうえ開業数か月前に原告の許に戻しホテルオークラマンとし
てふさわしい従業員とするべく徹底した教育をほどこした。物的設備についても我
国における最高の技術を結集して当時一万八〇〇〇坪の芸術品と評された建物を建
築し、一般調度品も細心の注意を払つて完成した。ところで、ホテル業はムードイ
ンダストリーといわれ、特に原告のような高級ホテルにおいて顧客が求めるものは
単なる宿泊設備と飲食の提供ではなく「情緒」のある生活そのものであるから、従
業員のユニホームのデザインも顧客に刺激を与えるようなものであつてはならず、
統一のとれた安定感を醸し出す落ち着いたものでなければならない。そこで、従業
員のユニホームを設立準備段階において特に衣装委員会を設けて検討し、重要文化
財保護委員Hらの協力をえて原告にふさわしいものを制定・作成した。
(二) 原告は以上のような特殊性に基づく服装の重要性に鑑み、就業規則の制定
にあたつても特に一か条を設け、その三〇条三号において会社の指定する服装以外
のものの着用を禁止し、さらに被服貸与規定及びユニホームレギユレイシヨンを制
定して細目的規定を明確にしたうえ、これら規定の趣旨を徹底させるため全従業員
に対し以下のような教育を行つている。
(1) 入社前教育
 原告は例年八月頃に翌年学卒者の採用を内定するが、この段階から社員教育を開
始し、八月以降毎月各内定者に対し「ホテルオークラ便り」や「社内報」を送付し
て原告についての正しい理解と入社後要求される注意点等を教育し、特にホテルマ
ンは身嗜みに留意しなければならない旨繰り返し強調している。
(2) 入社時教育
 正式入社時である四月一日を控えた三月中旬頃例年各内定者に対して一週間ない
し一〇日間「集合教育」を実施する。ここでは内定者に就業規則を配付して説明
し、特に原告においては一流ホテルにふさわしい服装と身嗜みが重要視され、服装
規定は厳格に運用実施されており、服装規定違反があつた場合には懲戒処分の対象
となる旨の説明を行い、毎朝、朝礼のあとで必ず服装点検を実施し、一人一人起立
させたうえ髪の手入やズボンの折り目等服装の基本について細かい教育を行う。内
定者が集合教育を終え正式入社すると、各配属先部署で部門別教育を実施する。前
記のように服装規定の基本をなし細部にわたる注意事項を指定した被服貸与規定及
びユニホームレギユレイシヨンを配付し、支給した制服にそつて細部にわたる服装
教育を行い、視覚教材も積極的に活用してホテルマンとしての服装身嗜みが如何に
重要であるかを繰り返し教育する。
(3) 中途入社員教育
 毎月入社する中途入社員に対しても、新入社員に対すると同様に就業規則、被服
貸与規定及びユニホームレギユレイシヨンに基づいて徹底した服装教育を実施した
後に各部署に配置している。
(4) 入社後の教育
 入社後においても、常時勤務中における上司の指摘を中心とするオージオテイ教
育を行つているほか、グループ別に中間教育を実施し、又研修課を中心として身嗜
み運動等の社内運動を企画し従業員から標語を募集するなどして従業員自ら進んで
服装に関心を持つよう注意を払つている。そして、従業員が時として顧客からバツ
ジ等を貰つても、他の顧客に対する影響を考慮し、バツジ等を交付した顧客にこと
わつたうえこれを外させている。
(三) 本件リボン着用は左のとおり原告の業務に障害を与えた。
(1) リボン着用者と非着用者が存在したためユニホームとしての存在が損われ
た。ユニホームはそれ自体として統一されたデザインを構成しているため、各個人
がこれに恣意的な付加物を着用すればデザインの統一と美しさを破壊し、ひいてホ
テルとしてのムードを損うものである。本件リボン着用当時原告の許には参加人組
合の他にホテルオークラ従業員組合が存在し、又多くの非組合員たる一般従業員が
いたため、リボン着用者と非着用者が同時に就労する結果となりユニホームとして
の統一性が著しく損われた。のみならず参加人組合員の中にもリボンを着用しない
者があり、リボン着用者の中でもリボン以外に例えばリボンのない一廻り大きい布
片(リボンに付いている布片より長さ約二センチメートル、幅約一センチメートル
大きいもの)でオレンジ色やグリーン色のもの等を着用したり、リボンの着用箇所
も上衣のネームプレートの下ばかりでなくズボンの腰上の部分や女子従業員におい
ては頭髪やエプロンの下に着用する等様々であつたためその不統一性は倍加され
た。又客面に出る可能性のある部署で勤務する者の中リボン着用者は昭和四五年一
〇月六日八四名、同月七日一一六名、同月二八日一一三名、同月二九日九三名、同
月三〇日八四名であつた。
(2) リボン着用を強行する参加人組合執行部と原告との間でトラブルが発生し
た。
 昭和四五年一〇月二八日午前八時頃、参加人E、参加人組合中央闘争委員I及び
職場委員Jらは当日が同人らの出勤日でなく、しかも自己の職場でない客室に隣接
する狭隘な三階ボーイステイシヨンにたむろし、業務に繁忙な客室課従業員に対し
リボン着用を執拗に強要して業務を妨害したばかりか、これを制止しようとしたK
客室課マネージヤーらの説得に応ぜず、長時間にわたつてトラブルを生じさせた。
 翌二九日午前一〇時過ぎ頃、同ステイシヨンにおいて、リボンの着用を監視する
ためパトロールしていた参加人DらとK客室課マネージヤーらとの間で紛議を生じ
た際、参加人組合中央闘争委員Lは「組合の指令で来ているからどこへ来ようと自
由だ。組合の指令で客室課長を監視しに来たのだ。」等と大声で怒鳴つたため、同
所に勤務していた客室課従業員らは非常に不安がり、おろおろした程であつた。
(3) 業務の停滞が続発した。
 原告はリボン着用による信用の失墜を極力防止するためリボン着用者を裏面(顧
客の目につかない箇所)に廻し、これにかえて他の部署に勤務する従業員をあてた
ため業務の停滞が続発した。例えば、昭和四五年一〇月七日午前八時頃オーキツド
ルームキヤツシヤーのMがリボンを着用したまま就労してその取り外しを拒否した
ため、同女に替えて夜勤明けのフロントキヤツシヤーN及びOを右業務にあてた
が、フロントキヤツシヤーとレストランキヤツシヤーとはその使用する機械が異つ
ていて操作が違ううえ、右Nらはレストランキヤツシヤーに必要な料理の種類と代
金に関する知識が不充分であつたため業務の停滞を生じたばかりか、前夜に引き続
く勤務のため疲労したので、更に収納課事務室でクレジツトの処理にあたつていた
Pを右両名の代替要員にせざるを得なかつたところ、同女もレストランキヤツシヤ
ーの事務に不慣れなためキヤツシヤー業務に停滞を生じたばかりか、クレジツトカ
ードの事務をその間停止せざるを得なかつた。又同日午前八時頃カメリヤコーナー
ウエイターのQがリボンを着用したまま客の対面サービスをしその取り外しを拒否
したので同人を裏面に廻し、代りに右業務に不慣れなRを補充せざるを得なかつた
ため、通常は三分位で出せる料理が五分以上もかかつてしまい、顧客に迷惑を及ぼ
したと同時にサービスの点からみてホテルとして極めて不都合な事態となつた。
(四) 顧客から原告に対して抗議があつた。
 原告に参集する顧客は各界の一流人が殆んどであり直接原告に対しあからさまに
抗議したり不快感を表明することは極めて稀であるのに、本件リボン着用に対して
は顧客から原告に不満の意が表明された。顧客のかかる不快感は参加人組合の要求
内容に対するものではなく、リボンを着用して組合活動をしながら職務に従事する
という勤務の仕方、サービスの仕方に対する不快感であり、リボンによつて反サー
ビス精神を最も顕著に表現しながら形式のみサービスをしている風を装うという顧
客無視の態度は誠に重大な業務阻害行為といわなければならない。このように本件
リボン着用は顧客に対し極めて不快感を与え原告の信用を大いに毀損したもので、
かかる信用の失墜は容易に回復し難いものである。
3 以上のような原告の業種、その特殊性、本件リボンの形状、色彩、記載文言、
着用者の職種、着用の時及び場所、その目的等の事情から明らかな如く本件リボン
闘争は原告の業務に対し重大な障害を惹起したものであり、前記のように到底正当
な組合活動として是認すべき余地はない。そこで、原告は本件リボン着用を企画・
指令・実行した参加人組合三役である参加人Aら六名の幹部責任を問い、就業規則
に従つて減給並びに譴責の各懲戒処分に付した。なお、第二回目のリボン着用で
は、原告において予めリボン着用者をできるだけ裏面に廻す準備をしたため客面に
出るリボン着用者の数が少なく、リボン着用者でも客面に出る際或いは原告から注
意を受けるや直ちにリボンを外した者がいたこと等を斟酌し、参加人Aらに対する
第二回目の処分を譴責に止めたものである。ところで、原告の賃金規定一九条本文
によれば懲戒処分を受けた者は原則として当期において昇給させないのであるが、
本件各懲戒処分については特に同条但書の原告が必要と認めた場合はこの限りでな
い旨の規定を適用し、当期においても被処分者全員を昇給させた。
 このように原告は不当な本件リボン着用に対して参加人組合三役を減給並びに譴
責に止める極めて軽い処分をもつて臨み、しかも被処分者に右懲戒処分以外の不利
益を与えない処置を採る等処分に当つては最大の考慮を払つたもので、本件各懲戒
処分はホテル業就中原告の業務運営を継続するうえで全く止むを得ない最少限の処
置であり、何ら不当労働行為にあたらない。
第三 証拠関係(省略)
                         

       理   由
一 行政処分の成立
 原告はホテル業を営む株式会社で、肩書地において『ホテルオークラ』を経営
し、その従業員数は約一二〇〇名である。参加人A、B、C、D及びEはホテルオ
ークラの従業員で、参加人組合の組合員たるものである。参加人組合は原告の従業
員をもつて組織するいわゆる企業別労働組合であり、かつ、ホテル、旅館及び料理
飲食業に従事する労働者をもつて組織されたいわゆる連合体たる参加人ホテル労連
の単位組合である。
 参加人組合は昭和四五年一〇月にいわゆるリボン闘争を実施し、当時参加人組合
の執行委員長である参加人A、同副委員長である参加人B、C及びD並びに同書記
長である参加人Eが参加人組合のいわゆる三役として右闘争実施にあたつたが、原
告は組合幹部たる右参加人五名の者に対し本件リボン闘争を実施したことの故をも
つていわゆる幹部責任を問う懲戒処分として同年一〇月及び一一月にそれぞれ減給
及び譴責をおこなつた。
 参加人らは、右懲戒処分が不当労働行為に該当するとして、昭和四六年一月二〇
日に原告を相手方として被告に対し右減給及び譴責処分を取り消すこと、及び右減
給に係る賃金相当額を支払うべきことの救済の申立てをした。被告は、右申立てに
係る都労委昭和四六年不第二号不当労働行為救済申立事件について、参加人らの請
求に係る救済を理由があると判定して、昭和四七年一〇月二日に原告に対して同年
九月一九日付命令書の写しを交付して、救済を認容する旨の命令(別紙記載のとお
り)を発した。
 以上の事実はいずれも当事者間に争いがない。ところで、被告は、右不当労働行
為救済申立事件について、参加人組合の後記二のリボン闘争は労働組合の正当な行
為であるとし、したがつて参加人Aら五名の者が組合幹部として本件リボン闘争を
実施したことの故をもつて、右五名の参加人に対して減給及び譴責処分をおこなつ
たことは、労働組合法七条一号の不利益取扱いたる不当労働行為にあたるとして、
参加人らの請求に係る救済の認容をしたのであるが、原告は後記二のリボン闘争の
正当行為性を争うので、これについて以下判断を進める。
二 リボン闘争の経緯
1 参加人組合は、昭和四五年九月二一日に原告に対して正従業員の賃金につき一
律一万円プラス年令別加算二〇〇〇円から一万七〇〇〇円までの昇給をおこなうこ
となどを要求して、三回にわたつて団体交渉をかさねたが、原告の提示額が平均九
〇〇二円の賃上げにとどまる回答であつたので、これを不満とし、右要求を貫徹す
る目的をもつて、組合員たる従業員は就業時間中に各自後記リボンを着用するもの
とするいわゆるリボン闘争を実施することとしたうえ、同年一〇月三日に原告に対
して原告の誠意ある賃上げ回答が同月五日までに提示されないときは同月六日午前
九時からリボン闘争に入る旨の通告をして、同月五日に原告から前記回答額に一〇
〇〇円を上積みして平均一万二円とする旨の提示を受けたが、これも不満として、
同月六日に組合員に対して同日午前九時から上衣左胸部位に後記リボンを着用すべ
き旨の闘争指令を発して、右日時から同月八日午前七時までリボン闘争を実施し
た。
 右の事実は当事者間に争いがない。そして、証人Sの証言及び同証言により真正
に成立したと認める甲第五五号証の記載によると、右リボン闘争に参加して後記リ
ボンを着用した者は、同月六日において出勤者九七八名中二二八名であり、同月七
日において出勤者九六二名中二七六名であることが認められる。
2 原告は、参加人組合の右闘争通告に接し、その日(同月三日)に参加人組合に
対して就業時間中のリボン着用を禁止する旨及びこれに違反したときは断乎たる処
置をとる旨の警告を文書で発するとともに、右警告書同旨の掲示で告と題するもの
を会社施設内に張り出したが、それにもかかわらず右1のとおりリボン闘争が実施
されたので、就業規則の定めるところに従い、参加人A、B、C、D及びEに対し
て、参加人組合の三役たる幹部として右1のリボン闘争を実施した責任を問い、同
月一三日にそれぞれ平均賃金の半日分を減給する旨の懲戒処分をおこなつた。この
ことは当事者間に争いがない。
3 参加人組合は、同月二四日に団体交渉によつて原告から賃上額平均一万一二六
一円とする提示を受けたが、右2の懲戒処分を不当として、同月二七日に右懲戒処
分の撤回等を要求して団体交渉に臨んだところ、原告の拒否にあい、ついに団体交
渉が決裂するにいたつたので、右要求を貫徹する目的をもつて、同日午後一一時過
ぎに原告に対して同月二八日午前七時からリボン闘争に入る旨の通告をしたうえ、
組合員に対して同月二八日午前七時から前回同様にリボンを着用すべき旨の闘争指
令を発して、右日時から同月三〇日午後一二時までリボン闘争を実施した。
 右の事実は当事者間に争いがなく、前記甲第五五号証の記載によると、右リボン
闘争に参加して後記リボンを着用した者は、同月二八日において出勤者九五〇名中
二五六名であり、同月二九日において出勤者九七三名中二四三名であり、同月三〇
日において出勤者九八九名中二三三名であつたことが認められる。
4 原告は、参加人組合の右闘争通告に接するや、ただちに同参加人に対して前回
同旨の警告文書を交付したにもかかわらず、右3のとおりリボン闘争が実施された
ので、前回同様に参加人Aら五名の者に対していわゆる幹部責任を問い、同年一一
月一九日にそれぞれ譴責処分をおこなつた。このことは当事者間に争いがない。
5 成立に争いのない乙第四号証の一、二、及び弁論の全趣旨によると、本件リボ
ン闘争の用に供されたリボンは、二種類あつて、いずれも布地を使用したものであ
るが、一つは、紅白各三枚の花弁を紅白交互に組み合わせた直径六センチメートル
大の円い花を象り、白色弁の一枚だけがさらに六セントメートル垂下した幅二・五
センチメートルの布地に二四ポイント大の明朝体で等間隔に要求貫徹の四字が黒色
スタンプで印されているものであり、他は、花弁の長さ三センチメートルの桃の花
を象り、花萼の中心から垂らした幅二・五センチメートル、長さ一一センチメート
ルの白布地に二八ポイント大の明朝体で等間隔に要求貫徹の四字が、これに添えて
一六ポイント大の明朝体でホテル労連の五字がそれぞれ朱色スタンプで印されてい
るものであつて、リボン着用者は右のリボンのいずれかを各自着ている上衣の左胸
部位に安全ピンで留めて佩用することを常態としており、要求貫徹の右四字は概ね
三メートル以内で判読しうることが認められる。
三 リボン闘争の特質
 いわゆるリボン闘争は労働者の使用者に対する要求ないし主張を貫徹する目的を
もつて、労働者がリボンを着用しておこなう団結示威の表現活動を行為内容とする
団体行動であるが、その有り様は前記二、5にみたとおりの方法及び態様をもつて
着用したリボンが団結の示威を表象するのである。いかにも、リボンそのものはな
にがしかの花の姿を観照させるような装飾的なものであつたりするが、労働者がこ
れをリボン闘争の用に供して佩用するときは、その形象を離れて団結の象徴と化す
るのである(象徴性)。ことさらに「団結」とか、「要求貫徹」とかいつたような
表記が添えられることがなくても、団結示威の表現に欠けるところはない。しか
も、リボン闘争による団結示威の表現作用は散発的又は間歇的に断続するのでもな
く、その着用を通じて間断なく執拗に持続する(執拗性)。そして、リボン闘争
は、その参加者全員がリボンを着用して職場に現われること(集団性)、同じよう
なリボンを同じ箇所に付けること(斉一性)、リボンの称呼にふさわしい形状、色
彩、大きさのものを目立つように佩用すること(明瞭性)によつて、労働者の団結
示威を端的に表現するものであるが、右のような象徴性、集団性、斉一性、明瞭性
及び執拗性がリボン闘争の威力を増幅させていることはいうまでもない。それにリ
ボンの製作、入手及び着用が簡単であることから安易にリボン闘争を実施すること
ができるし、リボン闘争を実施したためにロツクアウト、賃金カツトの対抗措置に
遭う虞れも殆んどないことから労働組合の戦術としてしばしば駆使される傾向にあ
るので(安直性)、リボン闘争が近時労働組合の有力な闘争戦術として確実な地歩
を占めていることは否定しがたい。
 リボン闘争における団結示威の性状は右にみたとおりであるが、リボン闘争によ
る団結示威の機能からみれば、リボン闘争は、一面使用者に対しては、労働者の団
結を示威する作用をもつものであるが、他面労働者においては、言語、身振り等の
伝達手段に訴えることなくして、リボンを着用して職場で相見えることにより、労
働者の連帯感をあらためて触発され、仲間の団結をより鞏固にして当面の闘争勝利
への士気を鼓舞し合う営為を、個個の労働者において自乗的に、労働者相互におい
て相乗的に果すのである。このように二面作用を営むものであるが、その機能領域
の異別によつてみれば、後者の営為はまさしく労働組合のいわゆる組合活動の領域
に属し、前者の営為は労働者の使用者に対する争議行為の領域に属する。
 本件において、参加人本人Eの本人尋問の結果に弁論の全趣旨をあわせると、本
件リボン闘争は、参加人組合の要求ないし主張を貫徹するために原告に対してする
団結の示威であることはいうまでもないが、それにもまして結成後三か月しか経つ
ていない参加人組合の内部における組合員間の連帯感ないし仲間意識の昂揚、団結
強化への士気の鼓舞といつたような参加人組合自身のいわば体作りの効験を重視
し、かつ、ストライキ一歩手前のウオーミングアツプ的戦術を狙つて実施したもの
であることが認められる。
四 リボン闘争の違法性
1 一般違法性
 いわゆるリボン闘争は一般に違法であると、当裁判所は判断するものであるが、
その違法性については、リボン闘争による団結示威の機能領域の異別という前記視
点から、組合活動の面と争議行為の面とにわけて考察することとする。
(一) 組合活動の違法性
 いわゆる組合活動として、労働者の連帯感を昂揚し、その士気を鼓舞するために
おこなう団体行動は、リボン闘争にかぎらず、ほかに鯨波(シユプレヒコール)を
挙げ、握り拳を突き上げてする集団示威もそうであるが、本来労働組合が自己の負
担及び利益においてその時間及び場所を設営しておこなうべきものであつて、この
ことは負担及び利益の帰属関係からして当然の事理に属する。ところで、勤務時間
中であるという場面は、労働者が使用者の業務上の指揮命令に服して労務の給付な
いし労働をしなければならない状況下のものであり、まさに使用者の負担及び利益
において用意されたものにほかならないから、勤務時間の場で労働者がリボン闘争
による組合活動に従事することは、人の褌で相撲を取る類の便乗行為であるという
べく、経済的公正を欠くものであり、しかも、これによつて、たとい労務の給付な
いし労働の成果にさしたる影響を与えないとみられるような場合においても、その
労働組合の組合員間においては、リボン闘争による団結の示威がかの象徴・集団・
斉一・明瞭・執拗性をもつて、労働者の連帯感を喚起し、闘争への士気を鼓舞し合
う営為を自乗的かつ相乗的に果すのである。したがつて、労働者がその労務の給付
ないし労働に服しながらリボン闘争による組合活動に従事することは、誠意に労務
に服すべき労働者の義務に違背するものと解するのが相当であるから、労働者が右
のようにして勤務時間中に組合活動を展開することを使用者において忍受しなけれ
ばならない理由はさらにない。
(二) 争議行為の違法性
 いわゆるリボン闘争において、団結の示威がおこなわれる場面では、団体交渉、
同盟罷業等の団体行動と同じように、労使対等の原則が支配するが、他方勤務時間
中である場面では、使用者の業務上の指揮命令とこれに従つて労働者が労務の給付
ないし労働に服しなければならない上下関係が支配する。したがつて、リボン闘争
の展開は、いきおい右の上下関係と対等関係とが重畳的に競合する場面を呈する。
これを心理構造のうえからみると、労働者の場合において、使用者の指揮命令に従
つて労務の給付ないし労働に服している場面では服従と誠実の心理構造がはたら
き、これに乗じて団結の示威をおこなつている場面では拮抗と闘争の心理構造がは
たらくが、両者は心理上相反撥する関係にありながら、その同時性のために二重構
造的に機能する。また使用者の場合において、業務指揮権にもとづいて労務の給付
ないし労働をさせている場面では指図と要求の心理構造がはたらき、リボン闘争に
よる団結示威のおこなわれている場面では逡巡と沮喪の心理構造がはたらくが、こ
こでも両者が二重構造的に機能するのである。
 右のような心理上の二重構造的機能から醸し出される違和感は労使ともに免れら
れないものであるが、特に使用者に対する神経戦術として心理的嫌がらせをはたす
効果が著しく、このリボン闘争の戦術効果の相乗累積は、やがて使用者と労働者間
の命令服従の上下関係をその根底において風化させる虞があるし、その幣害たるや
「リボン」を冠するといつた呼称の情緒性では到底企及しえない底のものであつ
て、使用者の業務指揮権の確立を脅かすに至るというべきである。そして、労働者
に対する関係においても、一面従順、他面反噬といつた心理上の二重機能的メカニ
ズムは倫理的存在たる人間の精神作用を分裂させて二重人格の形成を馴致する虞れ
なしとしないのであるから、労働人格の尊厳のため、リボン闘争は採らざる戦術と
いうべきである。
 そのうえ、労働者のリボン闘争に対抗しうる争議手段を使用者は持ちあわせな
い。すなわち、リボン闘争による団結の示威に従事しながらおこなう労務の給付な
いし労働が労務給付ないし労働自体として一見間然するところがないようにみられ
る場合、又はリボン闘争による業務阻害が使用者に対する心理的嫌がらせの域を出
ないものである場合において、リボン闘争の故をもつていわゆる賃金カツトをする
ことは、その技術的困難さもあつてしかく容易ではない。また、使用者の争議手段
たるロツクアウトは、リボン闘争における団結示威の性状に照らして、牛刀を用い
る憾があつて労使間の公平の原則に悖るものというべく、かつ、戦術的に、ロツク
アウトの硬直性をもつては到底リボン闘争の安直性・伸縮性に追随しえないことと
相俟つて、リボン闘争に対抗してロツクアウトを実施することもまた事実上不可能
であるから、リボン闘争においては、労使対等の原則からみて、使用者が労働者に
対抗しうる争議手段はないというべきである。
 以上のとおりであるから、リボン闘争は、争議行為の面においても、使用者にお
いてこれを忍受すべき合理的理由を欠くものと解すべきである。
 右(一)及び(二)にみたとおり、リボン闘争は、いわゆる組合活動の面におい
ても、争議行為の面においても、労働組合の正当な行為ではありえないというべき
である。そこで、本件リボン闘争は、すでに認定したところにより、いわゆるリボ
ン闘争を地で行つたものであることが明らかであるから、参加人組合の正当な行為
をもつて目すべきではないといわなければならない。
2 特別違法性
 右1において、いわゆるリボン闘争の一般違法性に照らして本件リボン闘争もま
た違法であることをみてきたわけであるが、本件リボン闘争による業務阻害につい
ては、さらに精覈に考察すべきものがある。
 成立に争いのない甲第一号証、第五号証から第一一号証までの各一、証人Tの証
言により真正に成立したと認める甲第二号証、第三号証、第五号証の二、三、第一
四号証の一、二、第一五号証、第二四号証の一から三までの各記載、証人U、Tの
各証言を総合すると、原告は、Vの長男で約二〇年間にわたり帝国ホテルの社長、
会長を経歴したGが都心に超一流のホテルを建設することを発意して、昭和三三年
一二月に設立された会社で肩書地に建物の瀟酒な風格と威容を自負する全館アウト
サイドルーム方式客室数五五〇ユニツト(四九〇室収容人員九七三名)を擁する三
つ矢形鉄骨鉄筋コンクリート造り地上一〇階地下二階塔屋四階を建築して、昭和三
七年五月にホテルオークラを開設し、いらい国際観光ホテル整備法(昭和二四年法
律二七九号)にもとづくホテル経営をしているものであるが、宿泊及び宴会等に特
に外国の元首、王公族、大臣、特使をはじめ、政治、経済、宗教、文化等各界のト
ツプ級の外客がよく利用していることから、国際的視野に立つてホテル業の研鑽、
運営に努め、外客接遇の充実をめざし、ホテル従業員の容姿、服装、身嗜み、挙
措、言行については、いわゆるホテルオークラマンの品格、威信なるものの矜持を
もつてその教育、研修に意を用い(国際観光ホテル整備法施行規則(昭和二五年運
輸省令四九号)五条の五参照)、たとえば、職種、職階ごとに一定基準の制服を勤
務中着用させ(同施行規則五条の六参照)、基準に定める以外のものは装飾品であ
つても一切着けさせないこととして規制しているので、本件リボン闘争に際して
は、事前にその非を強く警告し、闘争実施に入るや、リボンを着用した従業員は客
に接するおそれのない職場に臨機配置替えをおこなつて、争議状態にある労使間の
緊張関係をことさらに接客面で誇示されることがないように職制を動員して奔走さ
せたことを認めることができ、本件弁論の全趣旨及びこれにより真正に成立したと
認める甲第五〇号証の一から五までの記載によると、帝国ホテル、ホテルニユーオ
ータニ、パレスホテルなど都内屈指の一流ホテルにおいては、いずれも、ホテル従
業員の服装、身嗜み、言行等の躾に関し原告のホテルオークラと同工異曲格別の着
意をもつて律していることが認められる。そこで以上の認定事実に弁論の全趣旨を
あわせると、ホテルの企業経営においては、物的施設及び人的機構が客を中心にし
た組織的受入体制として総合的に演出され、全体としての情緒ないし雰囲気とあわ
せて客の接遇が重要視されることから、ホテル従業員は常に服装身嗜みに留意し、
挙措言行を慎み、終始明朗な態度をもつて親切丁寧に対応し、休らい、寛ぎ、快適
さが与えられるように客を接遇すべきことが至上命令として要請されるのであつ
て、ホテル営業におけるサービスの要諦を右のように措定するかぎり、ホテル経営
者の企業努力の中枢部分もまたそこにある。かように認めることができる。
 ところが、いわゆるリボン闘争の実施は、ホテル業の場合においては、それ自体
ホテルの施設機構のなかで労使が争議状態に入つて互いに緊張していることを端的
に誇示し、右の緊張関係をまのあたり現前させるものであつて、客がホテルサービ
スに求めている休らい、寛ぎ、そして快適さとはおよそ無縁であるばかりでなく、
徒らに違和、緊張、警戒の情感を掻き立ててホテルサービス業の総合的演出効果を
著しく減殺し、ひいてはホテルの品格、信望につき鼎の軽重を問われ、ホテルに対
する客の向背を左右するに至ること必定である。しかも、ホテルの品格、信望は、
ひとたび貶められれば、これを回復することが著しく困難であり、そのために金銭
をもつて償なうことができないほどの損害をこうむることもみやすい道理である。
 右によれば、ホテル業におけるいわゆるリボン闘争は、その業務の正常な運営を
阻害する意味合いに深甚なものがあるといいうるから、このような業務阻害をホテ
ル業の使用者において忍受しなければならない理由はさらにないと解すべきであ
る。
 本件リボン闘争は、まえにみたとおり、原告の経営に係るホテルオークラの営業
に関して参加人組合がいわゆるリボン闘争を実施したものにほかならないから、そ
の違法性は顕著であり、到底参加人組合の正当な行為たりえないといわなければな
らない。
五 行政処分の瑕疵
 以上の理由によれば、本件リボン闘争は、いわゆる組合活動の面においても、ま
た争議行為の面においても、違法であることが明らかであるから、参加人組合の正
当な行為ではありえないにもかかわらず、被告は、本件リボン闘争が参加人組合の
正当な行為であると判断し、この判断を前提として、原告の前記参加人五名の者に
対する減給及び譴責処分がそれぞれ不利益取扱いたる不当労働行為に該当すると判
定して、参加人らの請求に係る救済を認容したことが明らかである。そこで、本件
懲戒処分の成立及び効力について判断を進めるまでもなく、すでに本件救済命令は
その前提を誤まつた瑕疵ある行政処分として違法であり、取消しを免れないものと
いわなければならない。
 よつて、原告の本訴請求は理由があるから、これを正当として認容し、訴訟費用
の負担について民訴法八九条、九三条及び九四条を適用して、主文のとおり判決す
る。
(裁判官 中川幹郎 原島克己 大喜多啓光)
(別紙)
 記
 被申立人大成観光株式会社は、申立人A、同B、同C、同F、同D、同Eらに対
する昭和四五年一〇月一三日付減給処分および同年一一月一七日付譴責処分を取り
消し、かつ、申立人Aに対し金一五一五円、同Bに対し金一〇七二円、同Cに対し
八〇〇円、同Fに対し金七八三円、同Dに対し金五七四円、同Eに対し金九五七円
をそれぞれ支払わなければならない。