PSN SSBゼネレータ Ver.1.0 '10/05/03 Ver.1.1 '10/05/09 Ver.1.2 '10/05/11 Ver.1.3 '10/06/16 Ver.1.4 '10/08/17 All rights reserved JA3OOK 中村 利和 近頃、巷で流行っているものにフェージングタイプのSSBがある。昔からの主流であるフィル タタイプに比べて低音が豊かで音色も良いとのことで話題になっている。 フェージングタイプSSBの自作機で開局した当局にとっても身近な話題である。当時のリグを大 事に保存してきており、今年もお屠蘇を飲みながら、今年こそはこれを取り出していじくってみよ うと考えていた。 その直後の新年会の折、親しいOMがオールパス・フィルタ型のゼネレータを入手したとの耳寄 りな話。当然のこと興味を持ち、調査研究をしたいので借用を申し入れたところ快諾して頂いた。 これがそのゼネレータの写真である。オールパス・フィルタ型とはOPアンプによるオールパス・フィルタの位相回転機能(文献2) を利用して音声信号の位相差90度を正確に実現した最新のPSN型SSBゼネレータである。 借りたゼネレータを詳しく調べたところいくつか不具合箇所があったが、好調に動作する状態にま で対処できた。 しかし、これの設計製作者が不明であり、断りもなく回路の詳細などを公表して良いものかどう か迷っている。設計製作者本人または心当たりがある方は当局への連絡をしていただくと相談でき るのでありがたい。 このような事情があり、オールパス・フィルタ型の原稿は後回しにし、昔、SSBが始まった頃 に作ったPSNタイプゼネレータの改造から記載する。 1.PSNタイプのゼネレータ 1.1 42年ぶりの動作状況 ハムでSSBが始まった1965頃のこと、私もSSBでの開局を目指してSSB・ハンドブ ック(文献1)を購入し
何回も読みながらPSN型の送信機の製作に取り組んだ。出来上がったのがこれである。
左側がヘテロダイン/パワーアンプ部、右側がゼネレータ部。メータが買えずテスタで電流測 定。 全体の回路構成はこう。
全回路図は次の通り。
ゼネレータ部の裏面写真。
左側の下がLCキャリア発振部分。右側の上がAF増幅で、その下寄りのオクタルソケットが AF−PSN。中央下がバラモジで中央上側が増幅。左上はVOX回路。 AF−PSNはB&W型で、ユニーク無線のPSN−1DXを1966年12月に1,600円 +送料50円で購入した。
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このTXを使って開局した当時のシャックの写真である。
左からへテロダイン/パワーアンプ部、立ててあるのがゼネレータ部。右側上下部が7MHz専 用ダブルコンバージョン受信機(国際メカフィル MF-455-10CK 内臓)。トランシーブ操作もでき ショートQSOならQRHも問題なく、当時のログを調べて見ると、このシャックで155局と QSOし、AJDができている。 このゼネレータ部を保存しており、今年久しぶりに通電してみた。オシロスコープで波形を見 るとキャリアサプレッションは素晴らしいが、SSBではなくDSBである。 音声信号の90度位相差は意外にまともであるが、RFの位相差が90度とは程遠い。 開局当時も悪かったのか、それとも44年ほどの保存中に劣化したのか分からないが製作当時オ シロも無く、最初から悪かったと思われ、今になって赤面している。 とにかくこのゼネレータの再生と改善に取り組むこととした。 1.2 親機の選定 ヘテロダイン/パワーアンプ部分は保存されていなく、自作するか何かメーカ機を活用するか 悩んだが、巻頭に触れたオールパス・フィルタ型ゼネレータの出力周波数がKENWOODの周 波数構成に対応していることもあり、ちょうど手持ちのTS−830を親機(ハムバンドへの周 波数変換とパワーアンプ)にすることとした。 親機とのインターフェース条件は、 ・8.8315MHzのLSB ・TS-830の「IF UNITのETIFピン」または「RF UNITのFTIFピン」へ上記信号を入れること により、任意のハムバンドでUSBを発射可能 であり、この条件はオールパス・フィルタ型ゼネレータとの接続で実証済みである。 1.3 改造内容 (1)RF位相差回路 キャリア周波数は5MHzであり、90度位相差はLとCを利用した移相回路である。コイル のインダクタンスを色々変えてオシロで観測したが位相差だけでなく波形も満足できない。 (正弦波にならない)周波数が高すぎるせいではないかと考察するとともに、キャリア発振 がLC発振であり周波数安定度の面でも不満である。 オークションで探したところ1MHzと9.83MHzの水晶を入手することができキャリア発振を1MHz とした。 キャリア発振が5MHzから1MHzに下がるので大きなLが必要になりLを巻き足さなければな が面倒であり、思案の結果、文献1SSBハンドブックのJA2OVの記事を参考にRとC による移相回路に変更した。 RとCの値は文献にあるように R=1/(2ωC) の関係であり、R=318Ω C=500P とした。 回路をくみ上げて測定した結果、波形も良く90度位相差も良好であった。 しかし、出力電圧が不足しており、発振をTRで行い真空管でバッファを兼ねて増幅した。 水晶と直列に入れたLは発振周波数を少しでも低くしたいためである。Cだけ入れるより 安定して低くできた。 つまり、1MHz発振回路と9.83MHz発振回路のそれぞれのトリマを調整し8.8315MHzを得てい る。 無調整回路で発振させているがコイルの製作が面倒だったからであり、使用したTRは在 庫品を活用しただけ(どのTRも在庫品の活用)。 水晶と直列のCは直流をカットするためであり、Cをいれないと水晶が劣化しやすいよう に思う。9.83MHz発振回路も同様である。 (発振出力レベルが徐々に低下し、発振したりしなかったし、最後には永久に発振停止する。 水晶を交換しても発生するので根本的対策としてCをいれた) (2)9.83MHz発振と混合回路 元のゼネレータは5MHz出力であるが、今回は8.83MHz(厳密には8.8315MHz)出力であるの で、9.83MHzの発振回路と混合回路が必要である。 真空管の追加は実装上不可能なので発振も混合も半導体で組んで追加した。 発振回路をピアースBCにしたのは発振し易いように経験で思うから。 (3)不要成分の除去とレベル配分 ここまで組み込んで測定すると、出力に9.83MHzが大きく漏れていることが判明。 原因は、 @混合回路に入ってくる信号レベルが低すぎる A混合後のLC同調回路(フィルター)が少なく抑圧しきれない と考察。 そこで、 @の対策:平衡変調直後にTRアンプ1を追加 周波数が1MHzなのでコレクタ負荷をLC同調負荷にしなくても、R負荷で十分である と判断。 Aの対策:LC同調負荷のTRアンプ2を追加 なお9.83MHzのLCトラップも入れてみたが希望信号8.83MHzもかなり抑圧されてしま うことが分かり断念し、LCトラップをLC同調フィルタに変更。 (4)自己発振トラブル ここまでの対策でのRF信号系の回路構成は次の通り。 改造前 DBM→LC→→→→→→→→→→→→→→→→→→ LC→TUBEamp→LC→Output 現時点 DBM→LC→TRamp1→TRmix→LC→LC→TRamp2→LC→LC→TUBEamp→LC→Output この構成で組んでみると自己発振してしまう。 TRamp1やTRamp2のTR自体のゲインを下げたり、各LCの共振周波数を変えてゲインを下げ ると発振は止まるが、最終出力が低すぎてTS−830をドライブできない。 TRmix回路とTRamp2回路の基盤を分割し、基盤の配置位置を色々変えても止まらない。 両基盤の間やDBNとの間をアルミ板でシールドしてもだめ。 改造前はDBMからOutoutまで直線配置であったが、今回の改造で必要になった基盤3個(TR amp1回路基盤、TRmix回路基盤、TRamp2回路基盤)を直線に配置できなくなったのが自己発振 の原因のように思う。 結局、TRamp2基盤を距離も離してTUBEamp回路の後ろに配置することにより解決できた。 最終形 DBM→LC→TRamp1→TRmix→LC→LC→LC→TUBEamp→LC→TRamp2→LC→Output この自己発振には難渋し、解決までに長い日数がかかった。 (5)AF系統の問題 調査すると @500KHz以下の低域のレベルがだらだらと下がりすぎ AAF−PSNから出力が弱すぎ B3KHz以上の高域カットが全く効いていない (一見すると有効なLが入っているが効果がない) と言った問題点が判明。 対策として、 @の対策:原因はトランスST-26の周波数特性の悪さで、手持ちの別トランスに交換 念のためV7 12AT7のカソードフォロアのCの容量も増加 なお、元の回路ではトランスに直流高電圧がかかっており漏電が心配で、直流高電圧 がかからない回路に変更。 Aの対策:トランスの2次側インピーダンスを1KHzの信号で測定し、AF−PSNに入 る箇所のR(100Ωと350Ω)の値をインピーダンス整合する値に変更 さらに抵抗比の1:3.5の調整を容易にするためVRを増設。 Bの対策:Aのトランスの1次側にCを抱かせて改善 C他に、 ・12AT7を12AU7に変更 理由は12AU7の方が直線性が良いため。これは好みの範囲。 ・LSB/USB切替の省略 周波数関係からLSB専用になったため。 (6)信号レベルの再検討(Ver.1.2) 出来上がったが、 ・出力レベルが強すぎて親機をドライブしすぎなので、 最終段TRアンプのエミッタ・バイパスコンデンサを撤去 ・AFのゲインがありすぎてノイズを拾うので、 AFアンプ初段のカソード・バイパスコンデンサを撤去 しゲインを下げた。 それに伴って出力レベルが適正値である800mVp-pで、各段の信号レベルを実測しなおした。 1.4 この時点の回路と写真(2010年5月11日時点) 元のリグはオール真空管。今回の改造では実装スペースの制約から追加回路は半導体で組ん であり、真空管と半導体のハイブリッド構成である。 <注意:翌月さらに改造しているので最終形ではない>
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増設したUNITはフレキシブル基盤に組んであり、中央の基盤がMIXER UNIT。AMP UNIT1はMIXER UNITに隠れて見えない。左側の中央寄り基盤が9.83MHz OSC UNIT。左側上隅の基盤がAMP UNIT2。 1MHz OSC回路は左側下寄りでV1のソケットピンを利用して組んである。 1.5 改造後の測定結果 (1)AF位相(1,000Hz)
(2)シングルトーン(1,000Hz)
(3)ツートーン特性
(4)DSB(1,000Hz)
1.6 AFトランス再交換、電源組み込み(Ver.1.3) (1)オーディオトランス(T2)の再交換 低域(500Hzくらい以下)が低下する特性が気になり、中型のトランス(メーカ不明)に交 換し改善。同時に高域カットフィルタ回路も見直し。 (2)電源の組み込み 電源は外部ユニットから供給を受けていたのを、設置場所の変更などに不便なので小型の 電源トランスを購入し、同一シャーシに組み込んだ。 トランスはSR・磁気シールド付であるノグチ PMC-35E を選定。 1MHz OSC回路はV1のソケットピンを利用して組んでいたが、電源トランスを格納するスペ ースを確保するために、フレキシブル基盤に変更。 B電源系の合計消費電流がトランスの電流容量をオーバするので、各真空管の消費電流を 低減。 ・V4 6U8の三極管部とV8 6CB6のカソード抵抗値を大きくしバイアスを深くして電流減少。 ・V2 6BA6のカソード抵抗値を大きくすると増幅率が大幅低下。原因は6BA6はリモートカ ットオフ特性を持っているため。6AK5に変更し解決。 電源電圧も変わったのでトランスのコアなど再調整を行った。 (3)改造後の回路と写真(2010年6月16日時点) <注意:翌々月さらに改造しているので最終形ではない>
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積み込んだ電源トランスは最大DC電流30mAのかわいいサイズ。磁気シールド付を選び誘導ハム を予防した。
左側下が1MHzキャリアOSC UNITとバッファアンプV2、その上が9.83MHz OSC UNIT。右側の上が AF増幅V4で、その下がAFトランス、オクタルソケットがAF−PSN。その下がバッファV7。 中央下がバラモジで、中央の基盤がMIXER UNIT。AMP UNIT1はMIXER UNITに隠されて見えない。 中央上側がアンプV8、左上隅の基盤がAMP UNIT2。 1.7 LSBからUSBへの変更(Ver.1.4) (1)3.5MHzと7MHzバンドでLSBが出せるように親機とのインターフェース条件を ・8.8315MHzのLSB → 8.8285MHzのUSB 変更した。 (2)そのために ・1MHz発振回路(1MHz OSC UNIT)のLを取り去り、発振周波数を本来の1MHzとする ・9.83NHz発振回路(9.83MHz OSC UNIT)にLを追加し、発振周波数を本来より低くする ・AF−PSN回路の結線を逆にする 改造を行った。 この結果9.83NHz発振回路の出力レベルが低下し、その後ろの信号レベルが下がったが致し方ない。 ついでに、最終アンプ回路(AMP UNIT2)のバイアスが浅すぎるので深くした。 (3)改造後の回路と写真(2010年8月17日時点)
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なお、回路図は水魚堂提供の「回路図エディタ」で作図した。感謝します。 参考文献 1 SSB・ハンドブック 昭和41年1月25日 第5版発行 CQ出版株式会社 2 OPアンプ回路の設計 2008年8月1日 第24版発行 CQ出版株式会社 3 水魚堂