
日本語には、母音がつきまとう。
ワープロをローマ字変換で打って見ると良く分かると思う。もちろん、日本語が悪いのではなくて、英語とは違う言語形態だから仕方がない。
日本語の歌詞を曲に乗せようとすると、日本の作家はこの母音の問題に直面する。ロックもフォークも、英語圏の文化だから日本語で歌うことには、本来無理がある。
例えば、ビリージョエルやバディーホリーのように歌いたいと憧れた佐野元春氏や、サザンオールスターズの桑田佳祐氏は、歌唱法を工夫して母音から開放されようと、試みた。実際、彼らの口から「僕は母音をなんとかしたいんだ」と語った事実は僕は未確認だけど、作品を聞くと、そう言っているように感じる。
1978年、サザンオールスターズが『勝手にシンドバット』(作詩・作曲 桑田佳祐)を引き下げて登場した時、歌詞が聞き取れないボーカルが歌う元気な一発屋バンド、というのが一般人の認識だった。
ところが、歌詞の中で英語の部分になると、そのフレーズが不思議なことに、生き生きと聞こえるのである。それは発音の善し悪しではなく、とにかく自然に聞こえる。つまり、桑田氏の歌唱法は日本語が聞き取りにくいということと引き換えに、英語が歌詞の中にとけ込むことができたのである。
Mr. Childrenは、佐野元春氏やサザンオールスターズが構築してきた遺産を継承するバンドだと、僕は思っている。彼らは感性で作品を作るバンドではなく、むしろ頭で作品を構築するインテリバンドだ。理由は、独創性よりも、洗練された曲作りで勝負しているから。
感性で突き進む佐野元春氏や桑田佳祐氏とは、曲作りのスタンスが違うのである。
でも、桑田佳祐がMr.Childrenと『奇跡の地球』(1994年、作詞・作曲 桑田佳祐)を歌ったのは、分かる気がする。Mr.Childrenは、桑田佳祐氏をよく理解した、継承者なのだから。
Mr.Childrenは、佐野氏や桑田氏のように未知の世界には踏み込まない。その分、歌詞も曲もずっと聞きやすくスマートである。新しい思想を押し出すバンドにはパワーがあるけど、安心して聞くことはできないからね。
非凡なアーティストの苦労は、実はここにあるのだけど・・・・
『Everything(It's you)』は、ボーカルが「STAY」と叫ぶ部分が、とても自然で気持ちいい。知らない人は、ぜひ、聞いてみて下さい。この「STAY」と桜井氏が自然に叫ぶのに、『勝手にシンドバット』から20年近くかかった曲だと思うから。